ヒプマイ利き小説 (ページ1)

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左銃【629】ページ1

ベッドから起き上がると、左馬刻は居なくて
ほんの少しの温もりが残っている。
ベランダの方に目をやると
昨日着て来た服とは違う古着を着て
煙草を吸っている左馬刻が見えた。
「ワリィ。起こしちまったか」
煙草を灰皿に置き、俺の頭を撫でる。
「火、下さいよ」
煙草の箱を開けると
一つの指輪が入っていて
左馬刻は俺の手を取り
頬に触れさせた。
「銃兎、結婚しよう」
左馬刻が珍しく真剣に言うから
笑みが溢れた。
「ふふ、良いですよ。」
結婚式は、いつにしましょうか。
なんて話しながら
二人分の温もりが残るベッドに
潜った。
付き合い始めた時は
周りの目ばかり気にしていたが
左馬刻が余りにも堂々と見せつけるので
自分も全く気にならなくなった。
付き合い始めた時
組まで挨拶へ行ったし
理鶯にも伝えたのだ。
理鶯は、驚きもせず
そうか。と一言だけ呟いた。
特にバトルに支障も無い。
左馬刻も俺も、子供が欲しいという願望は無い。
寧ろ
二人の時間を大切にしたい。
だから、これで良かったのだと思う。
二人で父さんと母さんの墓参りに行った。
ウェディングドレスが良いかな。
二人共、タキシードにするべきか。
なんて話しながら、墓参りを済ませた。
子供を見せる事は、出来ないかも知れないけど
二人はきっと祝福してくれるだろう。
そう言うと、左馬刻は笑った。

次は、左馬刻の番だった。
左馬刻の父親の墓は無く
母親の墓だけが佇んでいた。
「母さん、俺な、コイツと結婚すんだ」
泣いているような
笑っているような
良くわからない顔で、左馬刻は言った。
帰りの車で
左馬刻は泣き疲れ、眠った。
初めて見る表情に
びっくりした。それと同時に
少し、嬉しくも思った。
俺にだけ見せる表情が
もっと増えますように。
いつも着けている手袋を外し
左馬刻の頭を撫で、頬にキスをした。

結婚式は、晴れると良いな。
子供の様に眠る左馬刻を起こさないように
そう、呟いた。