料理と呼び方 ページ3
李のことを考えていれば、お待たせいたしました、という落ち着いた声と共に、温かな料理が目の前に運ばれてきた。
アクアパッツァにラビオリ、ラザニアにサバ味噌定食。
メニューの中にイタリア料理ばかりだったから、イタリア料理のお店だと思っていたけど、他の料理もあったのね。
李に美味しいと紹介されてはいたけれど、来たことのなかった私には驚きである。
そういえば、少し変わったお店だと言っていたような、言っていなかったような。
「…なんというか、私だけ場違いなような気がしなくもないね…。」
苦笑しながら恥ずかしそうにする神宮寺寂雷。
そう、何を隠そうサバ味噌定食を頼んだのはこの人である。
「…いえ、好きなものを頼むのが一番だと思いますよ。」
フォローしながら、隣にいた観音坂独歩にお皿を渡す。
彼はラザニアだったか。
「…観音坂独歩さん、ラザニアです。一二三さんは、アクアパッツァとラビオリのどちらにされますか?」
私はどちらでも構いません、と言えば、観音坂独歩は身体をこちら側に傾け、畏まったように口を開いた。
「…あ、あの…何故、フルネームなのでしょうか…?あ、いや、フルネームが嫌だとかそういうわけではないのですが…。」
何故そこを気にするのか。
フルネームが嫌だなんて、29歳なのに可愛い人だ。
なんて考えてしまったのは内緒である。
「あ、いや、なんとなくだっただけです。なんとお呼びすればよろしいでしょうか…?」
「へ⁈な、なんでも大丈夫です!…あ、いや、私から言ったのに、なんでもなんて失礼ですよね…すみません、すみません!か、観音坂でも独歩でも大丈夫です!!」
観音坂独歩は頭を下げんばかりの勢い。
「あ、謝らないでください。…一二三さんと同じで名前の方がいいですか?」
「あ、はい!…あ、いや、名前でも名字でも大丈夫です!!」
ものすごい食いついてきた観音坂独歩に、耐えきれずにクスッと笑ってしまう。
「…じゃあ、私的な場面では、独歩さんとお呼びしますね。よろしければ、私のことも名前で呼んでください。名字だと長いと思うので。」
ボーッとこちらを見つめる観音坂独歩、もとい、独歩さん。
一二三さんに声をかけられ、独歩さんはまた謝罪を繰り返し、一二三さんに笑われる始末。
そんな二人を尻目に話は進んでいき、神宮寺寂雷のことも寂雷さんと呼ぶことになった。
177人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆかり@神無月 | 作成日時:2018年12月25日 14時