ば か 。 【伊藤真司】

8、「ウソつき」 ページ8

I-side









Aは昔からばかだった。


いや、「ばかのフリ」がうまかったのかもしれない。



どちらにしても、結局ばかだ。







アイツは大馬鹿野郎だ。









.









廊下を歩いていると、
窓の外から揉める声が聞こえてくる。


人目につかないからといって
完全に見えない場所というわけではない。




よく上級生の不良が下級生をいじめてたっけ。


またそれかな。









そう思いながら顔を出して確認してみると
どうやら女子生徒たちらしい。



軟高にスケバンなんかいた覚えはなかったが、
三人のスケバンが一人の女の子に詰め寄ってるようだ。





詰め寄られてる女の子はどう見ても普通の見た目。


あまり怯えてないようだけど。









伊藤「…………あのばか」


佐川「あっ伊藤さん！このあと移動教室っすけど……」


伊藤「わり。フケるわ」


佐川「えぇ？！ちょっと、伊藤さーん！！」







俺の背を止めようとする佐川を無視して
俺は上履きのまま渡り廊下に向かい、


校舎裏へ走っていく。



三人のスケバンはすぐに気がついて
顔を真っ青にした。




反対に、詰め寄られていた女子生徒は
「相変わらず」間抜けな笑顔を浮かべている。








「あれ〜真ちゃ〜ん！どうしたの〜？」


伊藤「どうしたのって……俺が聞きたいんだけど」




チラリ、と目線を動かせば
スケバンたちは慌てて目を逸らす。


誰がどう見てもどんなことをしていたのか、
100人に聞いて99人が同じことを答えるだろうに。







それなのに、このバカは。









「恋バナに決まってんじゃーん！」


伊藤「………はぁ？」


「ガールズトークだよガールズトーク。
男子は立ち入り禁止なんだけど〜！」


伊藤「何言ってんの？」








ヘラリヘラリと笑ってみせる。


スケバンたちがギョッとしていた。








「ていうか授業始まっちゃうじゃん！早く戻らないと〜！」






さっきまで自分に詰め寄って来ていたスケバンたちの
肩に手を添えて、

フレンドリーに押し出した。




三人のスケバンは複雑そうな顔をするものの
俺がいるのでこれ以上変なことをしようとした
わけではないようで、


慌てて校舎の方に戻っていく。







残されたのは、俺とA。








伊藤「…………本当は？なんか責められてたでしょ」


「どうだっけ。覚えてないや」









こちらを見ないで笑うA。






ほんとばかなんだよ。



コイツは。

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