ば か 。 【伊藤真司】

9、「変わったんだよ」 ページ9

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＿＿＿＿ “ 伊藤さんに近づかないで ”




先程の女の子たちに言われたか言葉と
向けられた厳しい視線をぼんやり思い出しながら
帰り支度を進める。


のんびりしすぎたせいで、教室にはほとんど人がいない。





……やっぱ真ちゃん、モテるんだなぁ。


さすが私の幼馴染。







誰もいないと思っていたけど、

廊下に出たところでバラン頭が
壁に寄りかかっていたのを見つけた。









「よっ」


伊藤「おぉ、今帰るの？遅いじゃん」


「転校生はやること多いの。誰か待ってるの？」


伊藤「いや…用事は終わってて」




妙に気まずそうな顔をする真ちゃん。


よくよく観察してみると、首後ろに回した反対の手に

何やら可愛らしい封筒が握られていた。




「……ほっほ〜ぅ」


伊藤「な、なんだよ…」


「真ちゃんモテモテじゃ〜ん」


伊藤「え？あっ、いや、」


「今さら隠しても無駄無駄。で？返事は？」


伊藤「知らない子だったし……断ったよ」


「うーわ、余裕な男はムカつくなぁ」


伊藤「なんでよ」





真ちゃんは、ふふ、って口角を上げる。



そういえば私と一緒にいるときは
いつも厳しい目つきだった気がするし、


帰ってきてこんなふうに笑ってもらえたのは
何気に初めてなのかもしれない。





しっかりとした男の子の体格なのもあって、

幼馴染に緊張しそうになる。








「じゃぁ一緒に帰ろうよ」


伊藤「そのつもりだった」


「……真ちゃんってさぁ、私の事大好きだよね」


伊藤「ブフゥッ」


「もー可愛いな！！」






昔は余裕で撫でれた頭が今は届かないし痛そうなので、


代わりに大きな背中をバンバンと叩いてやる。




……なんか、オバサンみたいな気がするけど。






盛大に吹き出した真ちゃんはジットリと
私を睨みつけてくる。








伊藤「……弟扱いすんな」


「弟っていうか息子に近い」


伊藤「身長小さいくせに」


「真ちゃんが大きいんだよ」


伊藤「‥…まぁ、男だから、俺は」


「何センチ？」


伊藤「ひゃく……」








その時不意に、真ちゃんの言葉が止まった。


視線は校門の方に向けられたまま動かない。






なんだろ……と同じようにそちらを向いてみる。









真ちゃんと同じくらいの背丈だろうか。


それと、サングラスにウェーブのかかった金髪。



日本ではあまり見られない白スーツ。









「………っ！！」









自然と、体が強張った。









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