【男主】乱歩さんの自称助手は自戮マニアなそうですよ？弐【文豪ストレイドッグス】

【第六十五話】 ページ18

｢ねえ団長｣

｢何だ｣

｢あのさ...他の皆は、何処にいるの?何か、やけに静かじゃない?｣

館の中は俺と団長としかいないのではと感じる程に静かだった。
鳥のせせらぎ、窓を叩く風の音は聞こえど、人の声というものは全く聞こえなかった。


｢皆は仕事さ。今はマフィアやら探偵社やら忙しいからね｣

｢そっか...｣

探偵社の皆には、何時会えるだろうか。
マフィア、ギルド、探偵社の三社で戦争を起こしている今だ。そう遅くはならないと思うが、 ギルドが探偵社を押し込もうとしているのは時間の問題だ。


ｺﾝｺﾝ


誰かがノックをする音がした。

｢入れ｣

｢...｣

｢...モンゴメリ｣

やって来たのはモンゴメリだった。彼女は手に、何故かハサミと洋服を持っていた。
すると団長は思い付いたかの様に指輪をパチンと鳴らす。


｢ああそうだ、そう言えばAのセットを頼むよう言っておいたな｣

｢俺のセット...?｣


団長は俺の帽子を取ると、顔を近付かせた。

｢また昔の頃のお前に戻ってもらう、覚えているか?あの服...｣

そう言われ、俺はやっと気付いた。モンゴメリが今持っている洋服は、昔俺が団長に貰ったらモノだ。

モンゴメリに近付き、洋服をまじまじと見る。


白のワイシャツに黒のベスト。
黒の短パンと黒タイツも現前だ。
そしてネクタイを嫌がっていた俺の為にわざわざ変えてくれた銀のループタイ。


でも...


｢あのタイツ、まだ履くの?俺もう二十二なんだけど...｣

流石にちょっと年齢的に厳しいんじゃ...と言ったが、却下された。


｢さ、部屋を移動して早速着替えてきなさい｣

｢あ、団長...｣

｢何だね｣


｢帽子、返して｣

｢...もうお前には必要ない｣

団長はゴミ箱の上で帽子を持った。

｢...っ!やめて、返して!｣

その帽子は探偵社で出た初給料で最初に買った...



『うわ、恐ろしく似合ってないね君!』


似合わないと笑われても嬉しかった、乱歩さんと同じ帽子＿＿＿。



｢...!｣


俺はモンゴメリの持っていたハサミを帽子に向かって投げた、ハサミの勢いで帽子共に壁に刺すつもりだった。

だが


｢...危ないだろA、人にハサミを投げるな｣

｢あっ...｣


ハサミはあっさりと掴まれ、帽子はゴミ箱の中へと音も無く落ちた。

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