The story of a world (hsj)

28 ページ28

yt.

張り詰めるだけ張り詰めた、緊張感。

とても歯がゆい。どうしてだろう、何時にもまして、動けない身が焦り焦りとする。
大声で叫びたくなる。
僕が生身なら先陣を切って…

(切って…？)何をしていた？



・


報せから2日。
コータを始めとする、魔物討伐隊はまだ戻らない。
いのちゃんは会議室に陣取り、一見静かに待っている。

重苦しい沈黙をたまに破る、長老達の怒声をそのたび諌めるのはユーヤだ。
彼も疲労の色を隠せなくなってるのに、冷静を心掛けようとしてるのが良く判る。
本当ならじーさん達に負けない大声で喚きたいだろうに。

場所的に多分…ダイキも参戦してると思うけど…。


(道師がいても手間取ってるってこと？)

感じない背筋を寒気が這う。うわーやだやだっ！やな可能性考えちゃったよ！
コータとダイキに何事もありませんように！
お願い早く『討伐成功！』のお知らせ来て！


『神官さまっっ！！』

前触れなく扉が開いた。

一斉の注目を浴びる中、跪くのも忘れた使者が声高に告げる。

『魔物討伐に成功！王を始め全員無事でございます！！』

言い終わる前に全体の空気が一気に緩む。

無事！無事だって！コータ無事だよいのちゃんっ！

蜂の巣をつついた大騒ぎになる会議室。
勢い良く立ち上がりこぶしを突き上げる者、一気に力が抜けて座り直す者、床にへたりこむ者様々。

『いのちゃん…？』

それまでほとんど動かなかったいのちゃんが、急に立ち上がった…と、思ったらどこ行くのー！僕を置いて行かないでー！

「いけません！」

「離せよユーヤっ！」

「なりません、ここで、お待ちください」

「離せったら！」

「間も無くお戻りになられます！ですからどうか！」

そうだよ！きっとへらっといつもの顔して帰ってくるよ！

「どうか…この場でお待ちくださいっ…」

そうだよ、いのちゃん。
だから落ち着いて待とうよ。

29→←27

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す