十九 ページ19
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「話って?」
「実は…」
光先生も宏太さんが留守の間は足繁く通ってくださり、時には泊まってくれる。
お医者様の光先生ならば、慧さんも安心するだろう。
今日も訪ねてくれて、診察を終えた慧さんが眠るのを待って移動した『診察室』で、お茶をお出ししながら切り出した。
「慧に何か役割を与える?」
「はい」
垣間見えた彼の性格は、恐らく勝ち気で負けず嫌い。
『大切にしてもらってる。でもそれだけじゃ違うの』
『おれも何かしたい。でも、それが何なのかわからない』
落ち着いてからそう書かれた文字は力強かった。
「することは、小さなことでいいと思うんです」
例えば、宏太さんの留守中の出来事を書き留めるとか。
好奇心を押さえることなく、しかも報告の義務感もある。
「そうすれば生活にも張りが出て、外にも目を向けられると…へっ?!」
「雄也、それは素晴らしい事だよ!」
がしっ!と両手を握られる。いや近い近い!
「わかりました、判りましたから離してくださいっ」
たおやかな手が俺から離れて、心底力が抜けた。
宏太さん居なくて良かった…。
「身内はねぇ…どうしても甘やかしてしまいがちだから」
椅子に身を戻しながら光先生が呟く。
「慧は昔からやんちゃでね。何かと奥様をハラハラさせてばかりいたんだよ」
「そうなんですか」
「うんそう」
思い出し笑いをしながら、優しい顔で話す光先生。淹れ直したお茶をお出しすれば、その表情のまま「ありがとう」と言われた。
「宏太が割と物静かな子供だったから、慧がやらかすことで家中笑いが絶えなかったっけ…」
何となく想像はつくな。
「俺も宏太も、本を読むのが好きだったからね。慧によく邪魔されたもんだよ」
「そうなんですか…」
あんなことがなければと、吐息のように零れた呟きに、僅かばかりの静寂が落ちる。
「うん。早速旦那様に提案してみよう。大切だからこそ、いつまでもぬるま湯に浸けておくのは良くない、とね」
「は…ぇえ?」
切り替えたかのように、きゅっと両目を瞑る光先生。
俺そこまで言ってないぞ。
「大丈夫、悪いようには決して言わないさ」
「いや、それは…」
「…誰だい」
「へ?」
つられて振り向けば、閉まってる障子があるだけ。
「人影があった気がしてね。気のせいか」
「はぁ…」
人影…?
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夏夢(プロフ) - mikaさん» mikaさまありがとうございます(*≧∀≦)読み返して頂いてるなんて嬉しすぎます!焦れったい展開で申し訳ないですが、もう少しお付き合いくださいませ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» ひかセンセーは周りのことなら敏いのですwそーよね、仕掛けるの見たかったっす!慧坊っちゃんも動くかなー?ヒャヒャヒャ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - このお話が好きすぎて何度も読み返しています…!慧さんと雄也さんの関係もさらに動きそうな予感…!?続きを楽しみにしてます♪ (2019年9月1日 19時) (レス) id: 8f2d116da6 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - いやぁぁんん。光先生ッタラァー。察しが良すぎるー。そして、、なんですと?仕掛けたかったですと??なぁんてこと!!見たかったぞwwwそして、かわいいヤキモチもいい!さすがコウタさんの選んだ人〜〜。さて?色々バレちゃったシー。味方が増えた! (2019年8月28日 15時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 私もびっくりだよゆやさん(笑)一体誰に教わったんだー!そんなテクで落とした坊っちゃん大変にならないといーけど♪うひゃひゃ (2019年8月2日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2016年10月17日 11時