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yuya.
結果から言えば俺たち討伐隊は勝った。
「…そう思った、隙を突かれた」
完全に油断だった。
破られた封印は、先に発見された物だけじゃなくもう一ヶ所あったのだ。
巧妙に隠されていた、破れた封印。誰もが体力の限界を避けられなかったが、ここで魔の侵入を許すわけにはいかない。
戦いの終盤、マスターを含む魔法使い達を狙う魔物どもを一掃し、力を抜いたその時だった。
どこにこんな力が。
魔物の捨て身の攻撃は、マスター達を直撃する。咄嗟に彼らを庇った俺は岩肌に叩き付けられ意識を失った。
「「そ、それでっ?」」
前のめりな二人に苦笑し、続ける。
「マスターの話では魔法使い達が力を集め、とどめを刺す事に成功したそうだ」
全身からほーっと力を抜く赤と銀の二人。案外いいコンビなのかな。
「…ケイがあれ程弱った理由はそれだけ?」
ふと割り入ったヒカルくんの静かな声に、首を振った。
「限界の身体で、魔封と治癒魔法を同時に使ったからだよ」
魔の傷は厄介で、一度傷付いたら根絶が難しい。
前髪を上げて見せれば、全員の息を飲む気配が伝わる。
右顔面を覆う、引き攣れた醜い傷痕。
瞼は開かない。
「ユーヤくんっ…」
悲痛な叫びを上げるユートに小さく笑って見せた。
「まだ生々しいけど殆ど痛みはないよ。みっともないから隠してるだけ」
マスターの…魔法使いの長の、渾身の治癒魔法のお陰で、魔物の気配は体内から消え去った。
けれどそれまでの戦いで疲労困憊の彼に、その負担は大きすぎて。
「マスターを休ませるために、ずっと街に居たし。このままだと怖がられてね」
「怖くなんかないっ!」
「おっ、と」
ドーン!と抱き付いてきた塊を辛うじて受け止める。
「ユーヤはまじょを守ったんだろ?!」
キッ、と見上げられ頷いたが。
「でも、俺の油断がマスターに余計な」
体力と魔法値を使わせた、そう言おうとしたのに。
「まじょだってっ…ユーヤを守ったんだっ」
思わず口を閉じてしまった。
「ユーヤは?ユーヤだってまじょを守ったことに後悔なんかないだろ?」
「ああ」
「だったら堂々としてればいいんだよ」
ドヤ顔でふんぞり返る子狼を、黙って見つめるしかできない。
まいったな…。
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夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 黄色いうさぎさまはじめまして☺️わぁ、何度も読んで頂いてるんですね☺️ぉ、おおぅ旗部屋リピートも(恥(/▽\)キャッ)💦こちらこそありがとうございます😆励みになります💕 (2022年9月14日 12時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - こんばんは、始めまして夏夢さん。夏夢さんの作品を定期的に読み直しています。回路…や尾行シリーズも好きです。旗部屋も😁どれも素敵なお話達、やさぐれた私の心を癒やしてもらってます。ありがとうございます (2022年9月13日 22時) (レス) id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ちぃちゃんさん» ちぃちゃんさま、拙話を寛ぎのお供にだなんて、恐縮でございます😆ありがとうございます(照)💕子狼くん、またお目見えしました時は遊びにきてくださいねー😊💕 (2022年5月3日 16時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - 連休で時間がたっぷりあるのでシリーズ読み返していて、「回路…」の薮伊野にキュンときました。 薮伊野大好きですが子狼くん達のお話も大好きで読み返してはやっぱり作者さんの紡ぐお話大好きだなと改めて思いました。 (2022年5月2日 20時) (レス) id: bdaf2a3994 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 食べられてしまいましたねー(^-^;そうなんですよ、お話の肝なのにさくっとし過ぎてしまいまして…これは覗き見案件なんでしょーか( ̄▽ ̄;) (2021年2月19日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2020年3月20日 23時