84 ページ36
tk.
すごい。
ほわほわとしていた空気が、一気に張り詰めた。
俺たちの反応に、何も感じてない薮くんだけが目を白黒させている。
ある意味ここまで鈍感だと、意図的なものさえ感じるけど。
「お目覚めになられたようね」
「ええ。光くん薮くん、テーブルずらそうか」
慎重に廊下側へ動かす。その間に葉月さんが、襖に寄り添うようにしながら声を掛けた。
「お目覚めでございますか」
彼女の問い掛けに数秒の沈黙。
『お入りください』
思わず三人で顔を見合わせた。
特徴的な伊野尾くんの声が、全く違う響きを持ってる。
「いのお…」
「待った薮、葉月さんが先」
腰を浮かせ掛けた彼を光くんが制した。
そう…
「失礼いたします、計様」
すらり、と開け放たれた襖の向こう。
寝ていた布団を背に、伊野尾くん…『計様』は正座をしていた。
寝かせた時と同じ、半袖のシャツと緩めのデニム。服装は変わらないのに、俺の目には着物姿に見えて思わず目を擦った。
「少々失礼を…計様、こちらをお羽織りくださいな」
布団の向こうにある箪笥から、たとう紙に包まれた着物を取り出した葉月さんは、伊野尾くん…計様にふわりと掛けた。
『ありがとう。ああ…やはり馴染みます』
柔らかく微笑む計様に、葉月さんも頷いてる。
「改めてまして、計様。
『葉月殿。この子の祖母上殿ですね』
「はい」
『彼には随分と負担を掛けています…申し訳ありません』
頭を下げる計様に、葉月さんが首を横に振る。
「どうぞお気になさらず。……あまり時間もございませんからね」
潜められた声に『計様』も頷く。
「さて。薮さん」
「はっ、はい!」
座卓を退かしたスペースに正座していた俺達。
向き直った葉月さんに呼ばれた薮くんが、ピシリと背筋を伸ばす。
うーん…対峙しても変化なし、か?
186人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» こちらこそいつもありがとうございます😊そうですね、紫さん他の3人よりちょっぴり大人です。次章もぜひ遊びに来てくださいね〜☺️ (1月12日 21時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - 更新ありがとうございます。紫さんが色々と紳士的な対応でいいなって思っております。この先現実世界で何が起きるのか楽しみです😊 (1月12日 19時) (レス) @page49 id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 可愛い黄色さん💛お持ち帰り案件ですよねっ🤭さて、現実世界でなにが起こるんでしょうか😅次章をお楽しみに〜😊💕 (1月12日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 泣き上戸な黄色さん可愛すぎです🤣どうにも『さわり』が気になるところですが😁平和の戻ったふたりのこれからのお話も楽しみです〜✨ (1月11日 21時) (レス) @page50 id: f14529ed1c (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 計さまったらさらっと謎を残して逝かれましたねぇ😅ぇええ、そんな嬉しいことをありがとうございます😆書けたらいいなぁ😊💕 (12月22日 21時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏夢 | 作成日時:2023年7月23日 22時