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診察を終えた俺は歩いて住宅街に来ていた。
ある一軒で足を止めスマホで着いたとメッセージを送ると、数秒ともせずに俺以外家にいないから入っていいよと返信が来たので遠慮なく玄関を開けた。
慣れた足並みで階段を上がり部屋の扉を開けると、見慣れた顔が居た。
「おっす大先生」
「いらっしゃい〜。腕もう平気か?」
「ん、問題なし。明日から部活復帰できるわ」
「おお良かったな。で、来て早速悪いんやけど電話してもええか?」
「なんや女か」
「まー女かと言えば女やけど〜」
すると大先生はおもむろにスマホを取り出して誰かに電話をかける。スピーカーにされたスマホからコール音が数回鳴り、もしもし、と聞こえた声に思わずばっと画面を見た。
「もしもーし、A?」
『ごめんね、時間大丈夫?』
「大丈夫やで。どしたん?」
電話の先はAさん…Aで、どうやら彼女から電話をしたいと大先生に頼んだらしい。そういえばこいつら幼馴染やったな。
『えっと………今日、病院、だったんだけど…』
「あ……うん、それで?」
『あのね、私…余命宣告、されたんだ。鬱には話しておこうと思って』
「あー、やっぱ…うん、そうか。どんくらいなん?」
『一年、だって』
「そ………そかぁ…一年、一年なぁ…」
大先生は深々と息をついた。スピーカーにしてわざわざ俺が来てから電話をかけたのはきっと、俺にもこの事を知って欲しかったのだろう。まぁ、その前に俺は直接彼女伝いで知ってしまったわけだが。
『…あっ、あとね、今日コネシマくんに会ってさ』
「え、そうなん?」
彼は彼女にそう言いながらも俺の方を向いた。俺は無言で首を縦に振る。
『たまたまなんだけど…コネシマくんにも余命のこと話したんだ。まぁ、そうなった事情はあるんだけど。でさ………えっと、ね、鬱』
「ん?なんや?」
『私がコネシマくんのこと、し…シッマって呼ぶの…違和感すごくない?』
「ちょっ、なになに、何があったん?」
Aはそう呼ぶに至った経緯を簡単に話す。大先生が明らか顔色を変えてニヤニヤし出すから、ガンつけて睨んでやれば更に楽しそうな笑みを受けべていた。
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なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると、まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです!! (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
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