小さな神威くんの飼育係

第136話 『談笑』 ページ7

「Aっ！本当にAなのか！？」





ぎゅうっと私を見るやいなや力強く抱きしめ
涙を貯めるのは紛れもない私の父。





『お父さん、なんでここにいんの?!』





「仕事が終わって帰ってきたんだ。
…一ヶ月前にな。」





一ヶ月前…？そうか、向こうの世界とこちらの世界
では時間の経過にズレがある。






「…すまない。ずっとAに寂しい思いを
させた。だから家出なんかしたんだろう？」





『え"』






ごめん父よ、家出では無い。







「…何はともあれ無事に帰ってきてくれて
良かった。家に戻ろう」





そう言って私の頭をぽんぽん撫でる父に
狼狽える私、久しぶりに会う父と一緒に並びながら
歩くなんて何年ぶりだろうか






何を話したらいいか分からずただ黙り込む私に
父が代わりに気を使うように話してきた






「俺が見ないうちにここも随分治安悪く
なったな…。さっき不良に絡まれてね」





『ブフォ、ちょ、お父さん、若い子達に
絡まれたとか何事よ！』






このオッサン、チョロいと思われたんだな






なんて一応大丈夫だったの？と声をかける
すると父さんは少し照れくさそうにまぁねなんて
頬をかいた






「たまたま通り掛かった子が助けてくれてね
大丈夫だったよ。」






いい青年だったなぁなんて、空を見上げ微笑む
父さんはそんな子を彼氏にするんだぞ！
なんて私の背を優しく叩いてきた






『…別に興味無いし』





「お！って事は好きな子出来たのか？」





『…う、っさいな！別にいいでしょ！！』






なんて、悪態づきながら家へと帰宅した






ー
ーー
ーーー






『で、何してんの…』





「何って、カレーライス作るんだ！
夕飯食べてないだろう？」





…いや、それはわかるよ。
でもお父さん貴方家事できたっけ？






案の定、キッチンの方で悲鳴をあげる父に
いいから座っててと声をかけバトンタッチ





さて、じゃがいもと人参、あとお肉も確保





あとは___





なんて、冷蔵庫を漁っていれば
上段に置かれている物体が目に映った







『あれ？何これ？ケーキ？』







この白い四角い甘い香りを放つのは間違いなく
ケーキの箱だ






なにかのお祝いごとでもあったっけ？なんてぼんやり
思いながら料理にうつり時は過ぎていった

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