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日にちをまたいでまで調べるほど焦らなくても大丈夫だと判断した私は、なるべく声をかけられないようにと気配を消しながら屯所へ戻った。もうほとんどの隊士達は夢の中で、土方さんや山崎などの極一部の人達は起きているとしてもだ。私の恐れている男はいびきでもかきながら眠りについていることであろう。そう思っていたのだが、
「朝帰りかと思ったが、こんな夜中に帰ってくるのも疑わないわけにゃいかねぇなぁ」
「ひぇっ」
私以上に気配を消して、後ろから私の左肩をぽんと叩き、耳元で囁いて来たのは私が最も会いたくなかった男。ましてや、丑三つ時ももうすぐなので本当に幽霊がでたのかと恐ろしくなった。
「うるうるしちゃって、そりゃ子羊の真似かィ?」
なら喰ってやろうか、と舌なめずりをした。これは、食べちゃうぞ♡とかではなく、物理的に喰われるなと確信した。今はもう、カップルでがおーとかやってる阿呆らしい感じではないのだ。決して普段やっているわけでもないわけではないのだが。いや、本当やってないから。
「食われる前に逃げるべし!!!!!」
「そうはさせねぇぜィ!!!!!!捉えた獲物は逃がさねぇのが狼なんでねィ!!!!」
「お前狼だったのかよ!!!!」
てっきり百獣の王らへんかと思ってたわ、とこの場に似合わないような偏見のツッコミは脳内だけにしておく。
それにしても、私達は結局最後は鬼ごっこになってる。いつもだ、そしていつも私が捕まるのだ。そろそろ羊代表になった私も勝ち目を見せなければ仲間に見せる顔がない。仲間なんていないだろ、と言われそうだか私の仲間はこの世の食べられちゃいそうな女の子たちなのである。そして、羊代表として狼代表のこいつを痛い目に合わせなければ時代を変えることなんて出来ないのだ。
そう、時代を変えるのは難しい。
と、堂々と私の頭の中でそんな感じの時代劇の幕開けと同時に、通りかかった部屋の障子が物凄い勢いと聞いたこともない音を立てて開けられた。それにビクッとしたのは羊だけではなかったようだ。
恐る恐る、ロボットのようにギギギギと首を回す。
そこには、羊も狼も狩る、狩人がいたのだ。
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ゆうひ(プロフ) - マダヲさん» ありがとうございます〜!好みにドンピシャだなんて、書いていて本当に良かったです。狂愛、みたいなものも大好きでして…笑本当にありがとうございます〜!!! (2019年4月5日 8時) (レス) id: cee43a9737 (このIDを非表示/違反報告)
マダヲ - 初めまして。堕天使さんの作品から来ました。題名に惹かれて覗いてみたら、私の好みにドンピシャで、特にいっそ殺してしまおうかの最後とか、ゾッとして素敵でした。これからも応援しているので、頑張ってください(≧∇≦) (2019年4月5日 1時) (レス) id: ad70ae180d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうひ | 作成日時:2018年5月13日 1時