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「……気をつけて」
屯所の門前で、私は彼らの健闘を祈る。見慣れた黒い隊服に帯刀、そして真剣な目。誰もが気持ちは同じだった。しかし、何処へ向かうのかも、どんな人を粛清するのかも教えてくれなかった今回はどんな気持ちで彼らを送り出せばいいのだろうか。
「A………ごめんな」
「総悟、何急に」
怖いよ、だなんて彼を見る。総悟の右手はするりと私の頬を包んだから、その手に私は自分の手を重ねた。すると、なんだか申し訳なさそうに笑う相互がいる。
「ごめんな、ごめん」
「ほんとに、どうしたのよ。そんな弱気じゃあ、すぐぶった斬られちゃうよ?」
私の肩に総悟は肩を乗せながらごめんな、愛してると最後の別れのような雰囲気で掠れた声で呟いていた。
貴方が謝る理由も悲しがる理由も全て分かっているけれど、知らんぷりをして私は彼の頭を撫でた。
「……総悟、時間だ」
「…へい」
それを見ていた土方さんは時計を見ると総悟に声をかけた。出発の時間だ、これから私の目の前に並ぶ隊士らは悪を善を基準として正す。
「土方さん、ありがとうございます」
「何の話だ…」
2人してボケたふりをする。それがどちらにとっても都合のいいことだからなのは知っている。煙草を咥え、ポケットに手を突っ込み隊士達の前でそれぞれと目をわせた。
「……いくぞ!」
「はい!」
土方さんの声が聞こえると総悟は私の元から去っていった。
私の頬にはまだ彼の温もりが残っている。
「同情なんて、して欲しくない」
そう、彼らの背中に見惚れながらも呟いた私の言葉は夜の空に飲み込まれて星となった。
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ゆうひ(プロフ) - マダヲさん» ありがとうございます〜!好みにドンピシャだなんて、書いていて本当に良かったです。狂愛、みたいなものも大好きでして…笑本当にありがとうございます〜!!! (2019年4月5日 8時) (レス) id: cee43a9737 (このIDを非表示/違反報告)
マダヲ - 初めまして。堕天使さんの作品から来ました。題名に惹かれて覗いてみたら、私の好みにドンピシャで、特にいっそ殺してしまおうかの最後とか、ゾッとして素敵でした。これからも応援しているので、頑張ってください(≧∇≦) (2019年4月5日 1時) (レス) id: ad70ae180d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうひ | 作成日時:2018年5月13日 1時