検索窓
今日:1 hit、昨日:10 hit、合計:13,560 hit

之で最期 ページ32

俺は外に出て、柵にもたれ掛かった。

「く…痛っ…。」

既に身体は現実(あっち)に戻る為、消え掛かっていた。

元々腹を撃たれて痛いってのに、帰るのにも痛みを伴って激痛だ。

叫びを必死に堪える。

死にそう、本当に痛い。


「…A…。」

痛すぎて治と国木田さんと敦くんの幻覚が見える。

「っ…やけにリアルな幻覚だ…。」

治の温かい手が触れて、幻覚じゃないことを理解する。

「一人で勝手に消えようとしないでくれ給え…!!」

「お…さむ…っ…これで…最後で…っ…最期だ…。」

泣きたくないのに勝手に涙が溢れる。

言いたい事もっとある。

力を振り絞って、治の胸倉を掴んで引っ張る。

そして、そのまま。


キスをした。


「A…死に際にやりそうなこと…やらないでくれ…お願いだから…!!」


治が涙を流してる。

拭わなきゃ、いつもみたいに笑えって。

戯けてって言わなきゃ。

「わ…らえ…敦くん…を…困…らせて…いっっ!!…くに…きだ…さんを…怒…らせて…笑え…よ…!!」

じゃなきゃ、嫌だ。

あぁもう…手が消えて、彼の涙を拭うことは出来ない。

「君といると調子が本当に狂う…。」

そう言って笑った。

治は俺の後頭部を抑えて何度もキスをすると、ぎゅっと俺を抱きしめた。

敦くんも国木田さんも俺を抱きしめて、「元気で」と言った。


傷みが薄れると伴に、意識も薄れた。

「A、愛してる。」

「お…れも…愛してる…治…。」



「ぁぃ………。」







目を覚ますと、車の中にいた。

「A、赤レンガ倉庫着いたよ〜。」

母が笑って俺に伝えた。

そっか俺、横浜に行ってたんだ。

車から降りて、港に向かう。治と来たところだ。

そう思って柵に寄りかかる。塩風が気持ちいい。

「…醒めたくなかった。」

俺はゆっくりしゃがみ、膝に顔を埋めた。


なんとなく柵を見ると、消え掛かってる文字を見つけた。

「…絶対怒られたな。」

そこには A&治 と書かれていた。

国木田さんに絶対怒られたな…(笑)

怒られてる治は気にせず名前を書いている姿が思い浮かんだ。

「馬鹿だなぁほんと。」

俺はふふっと笑った。


『A。』

「!?…お父さん今呼んだ?」

呼ばれた気がして、父の方を見る。

「え?呼んでないよ。」

「…そっか。」


あの声はきっと。









『愛してるよ、A。』







きっと、愛しい。






「俺も愛してる。」




そう呟く。





彼に届くよう。




そっと願った。







あとがき→←共同作業



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (52 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
89人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

舞華 - 物凄く面白いです! 私にしては珍しく泣きそうになりました。←知るか、ですよね。ごめんなさい。 更新期待しています! (2017年8月23日 22時) (レス) id: c608e0f4fb (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - 続きが気になります!更新頑張って下さい! (2017年8月12日 13時) (レス) id: 8ef45f8c23 (このIDを非表示/違反報告)
(~・д・)~ - めっちゃこの作品面白いです! 実は一章の最終話泣きましたw そのくらい見ごたえがあります! これからも頑張ってください!! (長文失礼しました…。) (2017年5月8日 23時) (レス) id: 4c2464909d (このIDを非表示/違反報告)
あらりぶ(プロフ) - お話面白かったです。更新頑張ってください! (2017年2月5日 17時) (レス) id: ddec9d4afe (このIDを非表示/違反報告)
明石(プロフ) - オリフラを外してください (2017年1月9日 12時) (レス) id: d2dad95824 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夜野 空 | 作成日時:2016年12月29日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。