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「それで君ら4人に挑戦状を送って謎解きをしてもらおうって、ほんといい迷惑だろうな、って、何回も思って…ゲホッ、ゲホゲホッ…」

鮫島の言葉が不自然に途切れ咳き込み始める。剣持は画面の中に手が届くことがないと知りながらも「背をさすってやらなくては」と焦ってしまう。しかし、剣持がそう思うより先に画面の中に鮫島以外の誰かの腕が侵入しその背をゆっくりと摩り始めた。腕は鮫島が水を求めるとすぐに、ガラスの水の注がれたグラスを鮫島の口元へと持ってゆく。鮫島はそんな腕の行動を受け入れ水を口に含ませた。
知らない感情が剣持の中に渦巻いた。剣持の知っている鮫島はいつもにこにこと人懐こい笑みを浮かべ何事にも真剣に、そして楽しんで、真っ直ぐという言葉が余るほど似合う男だった。しかし、今剣持の目に映るこの男は、痩せ細り言葉を紡ぐことも満足に出来てはいない。ましてや他人の手から水を飲むなど以前の鮫島なら想像もつかない。

僕は、咬くんの死を受け入れることができていなかったのかもしれない

剣持はそう思うと同時に、弱りきった大スターの姿を見て初めて、自分がその死をようやく理解したことを悟った。

「…ちょっと、長く話しすぎて喉やられたわ、ごめん。要点だけ伝える。まず、これじゃないもう一つの動画をそっちの世界での明日、YouTubeに投稿してもらいたい。内容は君らにも内緒。投稿してから観てほしい。
次に、パソコン、デスクの上のパソコンの中に死ぬ前に撮り溜めた動画が数本残ってるから、それを1日おきに投稿してほしい。
それから兄さ…社長に、預けてあるスマホこデータを、全部消してほしい。やましいものじゃないからどこ見たって構わないけど、観た後に消してほしい。

最後に、手紙。とりあえず、その部屋にあるのは君ら4人の分。ほんとはね、社長に関わりのあった人全員への手紙を、預けてるんだけど、君らには、直接…でもないか。なんでもない。
ごめん、たくさんのことを頼んじゃって。…君らは、俺のことを信頼してくれていたから、俺が死んだ後、その死を突然に知らされた後、もしかすると気に病んでわだかまりができてしまうかもしれない。そう思って、お節介だったら、ごめん。

……ほんとうは、死にたくない、ふわっちと、ういはと、黛も、のらねこも、葛葉とみとちゃんと刀也とひまわりとみんなと、もっと遊びたい…ッ……死んだ後も、鮫島咬でいたい」

訳30分に渡る動画は、その言葉を最後にプツリと音を立てて終了した。

2月4日→←ん



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作者名:でん太郎 | 作成日時:2022年10月9日 15時

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