そのライバー、殉職。 (ページ39)

今日:9 hit、昨日:33 hit、合計:299,969 hit

承突ページ39

「いや、いやいや、は？葛葉お前何やってんの？」

剣持が発した明らかな敵意と困惑を孕んだ声に葛葉の口角はゆるりと釣り上がった。剣持の眉が歪む。

「何笑ってんの」
「いやぁ、みんなマジになってんなって思って？」
「…マジにもなるだろ」
「はは、大切な先輩が残した最後のメッセージだから？じゃあ躊躇わずに謎とけよ腰抜け」

ガィンッ

葛葉が言い終わるのと同時に大きな衝突音が響いた。
剣持が、葛葉の手の中にあったスマートフォンを長く硬い竹刀ケースで弾き飛ばした音だった。スマートフォンは大きな破裂音を響かせデスクと衝突すると、その後はカラカラと小さい音をたててゲーミングチェアの座面に転がった。

「…手出さずに口で言えよもちさんそういうの得意だろ」
「っお前は！委員長の気持ちを汲めねぇのかよ！！」

ビリビリと脳が痺れる程の怒鳴り声に葛葉は思わず耳を塞ぐ。月ノとひまわりはお互いに身を寄せ合うようにしてドアのそばまで後ずさっている。

「インチョが謎解きしましょうっていうから俺らここまできてんだろ。なに？今更やめたいって」
「ぉ…まえっ」

ぐんと体が引かれる感覚とともに剣持の顔が近くなった。ジャージの首元をつかむ手は怒りからかブルブルと震えている。眉を釣りあげ自分を鋭く睨みつける顔目に見えるほどの怒りに染まった端正な顔に葛葉はふっと息をふきかけた。

「力弱ぇよ。で？もちさんにばっか怒鳴らせてインチョはなんか言うことないんすか」
「っ…」

葛葉は気まずそうに口をつぐんだ月ノを剣持の手を片手で解きながら振り返り言葉を続ける。

「大体なんすか俺の感情って。あんた俺の気持ち知ってんすかおかしいなぁ俺一回も話したことねぇんだけど」
「おい葛葉！」
「もちさんだって決意無駄にとか言われて、決意も何もねぇだろ俺らがここでさめさんの挑戦状と向き合ってんのは俺らのためでもリスナーのためでもなくさめさんのためだろ」

剣持がカサリと乾いた唇を強く噛み押し黙る。

「…ムカついてんすよ。みんなにダメージ残して気味悪いツイートして。どんだけお前に振り回されなきゃなんねぇんだって。いいよ、そんなに周り引っ掻き回してまで伝えたいもんあるなら望み通り伝えてやるよって…だから、あんたらが降りても俺は降りねぇ」

「…葛葉」
「本ひまも、昨日まで体調崩しまくってたんだから休めばいいじゃん。逐一連絡するしなんなら通話繋いでてもいいから」

葛葉はそれを境にぷつりと言葉を切り、俯いた。