そのライバー、殉職。 (ページ36)

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生長ページ36

「…なにかわかったんですか？」
「多分アラーム10時半と11時にセットされとる。ほら、画面の左下、2330 1100って書いとるやろ、これ、設定済みのアラーム時間なんやないかな」

指の指された部分には確かにその文字列がきちんと並んでいて、剣持は自分では全く気が付かなかったそれに思わず「なるほど」と呟く。それと同時にひまわりの鮫島の関連するものへの理解の深さ、観察眼の鋭さに驚かされた。

「じゃあ、時計の時間をそれぞれ23時半と11時に合わせれば何か起こるってことですよね」
「…たぶん」
「そうと分かればやりましょう。…僕達は、これを解いて咬くんに応えなければいけないんだから」

剣持はひまわりから置き時計を受け取るとその裏に設置されたボタンを何度か押した。

「あと、一分でタイマーが作動するようにしました」

コトリと置かれた時計。

あと一分

剣持の言葉に、突然進展した事態にその場にいる全員が息を顰め時が過ぎ去るのを待っている。

一秒、二秒、その時が近づくにつれ剣持は自身の心臓が脈打つのがだんだんと大きくなっていくのを感じた。

血液が全身を周り体温が上昇する。熱がぶり返しただろうか。しかし、それでも良かった。
ようやく、鮫島の核心に触れられる

かちり

そんな、小さな音が聞こえたような聞こえなかったような。

《…えす、えいち、えー、あーる、けー、あんだーばー、じー、えー、おー》

「こ、ぅくん…っ」

部屋に響いたのは鮫島の声だった。

予期しなかったそれにひまわりがくずおれ、葛葉は咄嗟にその体を捕まえた。完全に倒れてしまわないように強く掴んだ腕は葛葉の手に伝わるほどに震えている。

そっと地面へと座らせればひまわりはきゅうと体を縮めた。

「ひまちゃん、大丈夫ですか？」
「ごめ、びっくりしちゃって…」

月ノがひまわりの背をゆっくりと擦りながら手を握る。それに縋るようにきつく握り返したひまわりだが、しばらく目をつぶり項垂れたあと勢いよく顔を上げた。

「…よし、大丈夫。ごめん、もう平気やから」
「…無理はしないでね」
「ありがとみとちゃん」

ひまわりの声は震えながらもその目はしっかりと月ノを捉え足の横で握られた拳はあまりの力にブルブルと震え、恐らく手のひらには爪の痕がくっきりと刻まれているだろう。

つよく、なっている

ひまわりの強く光る翠に月ノは思わず笑みをこぼす。

「では、もう一度」

1分後、剣持の手の中で時計は再び鮫島の声を鳴らした。