そのライバー、殉職。 (ページ35)

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決められた時間ページ35

月ノの言葉に三人はベッドの傍に置かれた目覚まし時計に視線を向けた。
確かに、そこには真っ赤なデジタル時計が置いてある。カーテンは紺、掛け布団は紺と黄色、デスクやチェアや機材は黒で統一され、その全てに黄色の差し色が入っている。唯一部屋の壁だけは白だったが部屋に置かれた家具の色味のまとめ役と言ったところか、格別この部屋から外れているということは無かった。鮫島のこだわりが垣間見えるその部屋。

しかし、この目覚まし時計はどうだろうか。
そんな統一された色の中にひとつ目立つ赤。それはデジタル特有の角張った数字で現在時刻を指し示していた。

そういうものだと言われれば気にもならない小さなその違和感に、月ノはこの部屋に足を踏み入れた時から引っ掛かりを覚えていた。
鮫島は、そういった自己表現にこだわりを持つ男であったから、何だか「らしくない」と思ったのだ。

「でもそれがさめさんのこだわりってパターンもあるくね」

葛葉は月ノの言葉にそう返しながらベッドの脇へと近ずいていき、真っ赤な目覚まし時計を手に取った。途端、目覚ましから無機質な電子音がひとつ、鳴った。

突然の出来事に目覚まし時計を持っていた葛葉はもちろん、月ノや剣持、ひまわりも驚きその場に固まった。

「…今の、なに？」

剣持の小さな呟き。
それに答えるものは誰もおらず、その代わり葛葉が剣持に「自分で確かめろ」と言うように目覚まし時計を手渡した。

剣持はそれを受け取り音がなった原因を確かめようと目覚まし時計をくるりと一回転させた。

それと同時にピ、ピ、と音を発する目覚まし時計。剣持は納得したように頷いた。

「…やっぱり時計のモードが切り替わっただけですよ。ほら、こうやって下にする面を変えると、現在時刻、設定されたアラーム、室温、って順に変わるみたい」

剣持はゆっくりと目覚まし時計を回転させながら、月ノたち三人に説明していく。確かに、剣持の言う通り目覚まし時計はくるくると回される度、機能を変えた。

そして、何度目かに目覚まし時計の画面がアラーム画面に切り替わった時、ひまわりがふと声を上げた。

「刀也くんまって、アラーム画面、もっかいみして」
「え、いいですけど。まってね、…はい」

剣持からアラーム画面が表示される目覚まし時計を受け取ったひまわりは数秒間それを見つめたあと、「やっぱり」と小さく呟いた。