そのライバー、殉職。 (ページ26)

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合鍵の不思議ページ26

「…鮫島さん、こんな所に住んでいたんですね」

月ノはそう呟いた。
ひまわりに連れられて3人は鮫島が住んでいたという家までやって来た。

鮫島は綺麗好きだった。カバンの中は常に整理整頓され、四方八方に散らかる銀髪は間近で見なくとも分かるほど手入れが行き届いており、光を反射して天使の輪を作る。肌はいつでも真っ白で毛穴なんて針の先ほども見えない。着ている服を見てみてもパリッと清潔感のあるものばかり。

「綺麗好きなんですね」と言ってみた事があったが「頭悪くて汚いとか嫌だからせめて身だしなみくらいは」なんて困ったような笑いが返ってきた。

そんな鮫島の住む家だ。きっとセキュリティは万全で、清潔感に溢れた高級とまでは行かなくともそこそこ値の張るマンションなのだろう。そう思っていたのだ。

そんな月ノの想像とは裏腹に、目の前にそびえ立つのは塀に蔦が這い、なんだか湿気の多い大きな一軒家。本当にこんな所に鮫島は住んでいたのだろうか…？ひまわりが間違えたのではないだろうか。

そう思ってしまうほど月ノの知っている鮫島の像とその家はミスマッチであった。

「ひまもねぇ初めて来た時はびっくりしたんだよ。咬くん昔話に出てきそうなお家住んどるね！？って」
「…あぁ、確かにそんなお話ありそうですね」

ひまわりの感想も少しズレてはいないだろうか。
月ノ自身とひまわりの着眼点のズレに苦笑いを浮かべる。

そんな月ノを知ってか知らずかひまわりは古い木製の扉に近づき、制服のポケットからひとつの鍵を取り出し、ドアノブへ差し込むとゆっくりと右回しに捻った。月ノはひまわりの自然すぎる動作に目を丸くした。それは家とは正反対にぴかぴかと太陽の光を反射して光っている。

いや、問題はそこではないのだ。

「…本ひまお前さめさん家の鍵もってんの？」

心底驚いたような声色。
後ろから聞こえてきた疑問に月ノは思わず大きく頷く。振り返れば葛葉が若干眉を寄せ口の端をヒクヒクと引き攣らせている。剣持は特に何も思っていないのか感情の読めない瞳で月ノたち3人をみつめている。

「えっ？持っとるけど、どうして？」

今度はひまわりが心から不思議そうな声を出した。
まるでそれは至極当然のことでむしろ不思議がる月ノたちがおかしいとまで言わんばかりの声色。

「…んや、やっぱいいわ」

葛葉が疑問を撤回するのも、ひまわりの何一つ濁りない瞳を見れば当然のことであった。