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「ちゃんと断ったんですね」
「ちゃんと、って…当たり前でしょ」
「はい、当たり前ですよ、あなたは僕と付き合ってるんだから」
彼は意志を潜めて、ふふふと笑う。そしてその笑みが段々薄くなり、考え込むように手を顎にあてがった彼はふん、と首を傾げた。
その仕草に、私も首を傾げる。
「…あんまり意味なかったかな。彼氏がいるって言っても告白、するやつはするんだ」
「…そうみたいだね」
確かに、告白をされるという状況を避けるために始めた関係にしては、私も彼も既に一度ずつ、自身への想いを打ち明けられている。でも、断りやすさは段違いだったな…
「でも、断りやすいですよね。既に相手がいるっていう文句は」
「っえ」
「ん？そんなことないですか？僕結構あっさり断れて助かったけど」
さっきのやつも引き早かった気がするし…と再び首を傾げた彼に、私は慌てて首を振った。
「全然…！断りやすさはピカイチだったよ」
ただ、君に思考を読まれたのかと思って…という言葉は飲み込みそう伝えれば刀也くんは少しだけその表情を緩め笑う。
「よかったです。契約が果たされないなんて、あってはならないですからね」
「…あはは」
やけに現実的なことばかり言う彼に思わず乾いた笑いがこぼれる。
目の前で柔らかい笑みを浮かべる彼が、こんなにも淡白で冷静だったなんて、私はこの間まで全く、知りもしなかった。
高校生になって、初めの一年は共にクラス委員を務め、そこそこ仲も良かったはずなのに。
「…刀也くんは、将来大きい会社を裏から牛耳りそうだよね」
「えっなんですか唐突に。こわ…いやでもおもちゃ会社なら尊い命の笑顔を守れるか…？」
「いや、ほんと、そういうところ、私刀也くんのこと分かんないなぁ」
私の言葉に、彼は不満気に眉を寄せる。そして「ロリが分からないなんて僕こそあなたのことがわからない」なんて世迷言を宣うのだ。
「…よく、それ1年間隠し通せたよね」
「隠してませんよ」
「…え？」
「隠してないですよ。むしろロリの尊さは全人類が知るべきだと思っています。そのためなら僕は全校生徒の前でだってロリを語ってみせます」
「や、もう、いいです…」
唐突に饒舌になった彼に思わず身を引く。と同時に、彼のこんな面は今の関係になることを承諾しなければ知り得なかったのか、と思うと少しだけおかしくなってしまい、笑いが溢れた。
「なんです、ひとの真剣な話を全く笑うなんて」
あぁ、あと、不満気に突き出された薄い唇も。
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作者名：でん太郎
| 作成日時：2022年10月2日 17時
