愛してその醜を忘る【短編集】

. ページ9

「ええやんAちゃん、僕らお菓子貰ったんやし」

私の袖を くいくい、と引っ張って昴生から離れるように命じる。

『犬みたいやなあ 笑』

「犬ちゃう」

『わかってるわかってる』

「ちょっと俺トイレ行ってくる」

「…！
ずっと行っててええで！？」

「あほか、Aは俺と遊びに来てん
すぐ戻ってくる」

『行ってらっしゃい。笑』

部屋の扉が閉まると、亜生が不貞腐れた顔で私を見た。

『…ふっ、なんちゅう顔してんねん笑』

「兄ちゃん、遠い方のコンビニ行ったと思ったら すぐそこの方やったもん

もっと2人の時間あると思ってたのに」

『…ほんなら、2人の時間戻ってきたんやしお菓子食べようや』

「食べるけど」

『んふふ、笑』

「Aちゃん、やっぱり僕の事子どもやと思ってる」

『えー？思ってへんよ、亜生は亜生やん』

「思ってる、…弟としか見てくれへんやん、」

…僕はこんなに好きやのに、なんて呟く亜生を抱き締める。


「…A、ちゃん、」

『もっと可愛い子居てるでしょ』

「え、…？」

『同級生とか、友達に』

「…居らへん…！Aちゃんより可愛い子とか居らん！」

『ほんまに？私だけ？』

「…っ、」ｺｸｯ


少し顔を赤らめている亜生の唇に、自分の唇を寄せる。

『…チョコの味する』

体を離して亜生を見つめると 声も出ないくらいに驚いていた

それが、すごく愛おしくて


「ただいま〜」

「…僕、！コンビニ！行ってくる…！」

「…行ってらっしゃい…？」

『行ってらっしゃい』

顔を真っ赤にして走って行った亜生、
やっぱりもうちょっと、追われ続けるのもいいかも。




「何したん」

コントローラーを激しく操作しながら聞かれる。

『ちゅーしただけ』

「なに、もう好きや言うたん？」

『言うてへんよ』

「別に俺と遊びに来たんちゃうもんな」

『うるさいねん

……はい、雑魚。』

「ほんま、A強すぎ」

昔の相手：河井ゆずる→←同級生の弟:亜生

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す