ワンルーム・ラブ〈赤〉 (ページ32)

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「ん？」

「なんで最近帰り遅いん？」

いつも通り、いつも通りの自分で

しげの方を見た

「え？…あぁ……ちょっとな」

そこで素直に言ってくれたなら

私もちゃんと諦めつくし納得もできてたと思う

でもそんな分かりやすく濁されたら

「彼女でも出来たん？」

「え？なんで？」

「いや、さっき駅で見たから」

別に嘘をつく必要もない、とそう言えば

着替えを出していた手がピタリと止まるしげ

「そう、なんや」

「うん、すごい美人な人といたけど彼女？」

「…ちゃうよ。……でも」

でも、の続きは言ってくれなかった

「しげ、最近素っ気ないし変わったよな、」

「え？」

「望くんも言うてた、最近付き合い悪いって
ホンマにそう思うわ」

こんなこと

言いたかったわけじゃないのに

「なんやねん、急に」

「こっちも気つかってしげに夜ご飯いるんかとか
いろいろ話しかけてたのに素っ気ない返事ばっかり、帰ってくんのも遅いしさ…

どんな事情かは知らんけどさっきの女の子といるんとちゃうん？」

違う、

こんなこと言いたいんじゃなくて、

止めようと思っても

私の減らず口は止まらない

「別にしげはしげのやりたい事とかあるやろうし
わざわざ帰ってきてくれんくてもいいんやで？」

やばい、そう思った時には遅かった

「さっきから好き勝手いいやがって」

「帰ってきてくれんでもええって、なんやねん
そう思ってるならすぐ言うてくれればよかったのに。
今まで気付かんで悪かったな」

違う、違うのって言いたかった

でもぐしゃぐしゃ、と髪の毛を乱して出て行ってしまったしげの姿を

止まることもできず何も言えず

私の夏は終わった

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