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緑side
「………なぁ神ちゃん。なんか怒ってる？」
「別に？」
いつも一緒に食べるクラスメイトに
断りを入れて教室をこっそり抜け出した昼休み。
選んだ場所は超穴場である
屋上前の階段の踊り場だった。
なのにどういうわけか。
腰を下ろした1分後には
すぐにしげがやって来て隣へと座ってきた。
そして次に出された言葉が冒頭となる。
「なぁ、神ちゃん？」
「ん？」
「こっち見てよ。目ぇ合わしたい」
「なにぃよ。これでええの？」
昨日の晩ご飯の残りを詰めたお弁当。
タッパーの蓋を開けてから
しげへと顔を向ければ
ちょっぴり寂しそうな顔だ。
「やっぱり、怒ってる」
「怒ってないってば。ほら、あーん」
「ん、」
妹たちのために作った
タコさんウインナー。
それを口元は持っていけば
素直に食べてくれるしげ。
「美味しい」と言ってくれるのは
欠かさないものの
やはり腑に落ちてはなかったらしい。
どんどん子犬みたいな顔になっていくしげに
何故かこっちまで我慢できなくて、
タコさんウインナーが一つなくなっただけの
お弁当の蓋をもう一度被せた。
「……ちょっと、妬いただけ」
「え？」
「さっきの、休憩時間の時のやつ…」
情けない嫉妬を全て明かすのは恥ずかしいから
掻い摘んでさっきの会話を伝える。
別に友達の彼女を褒めたことに
妬いてるわけじゃない。
でもちょっぴり面白くないのも本音だった。
だってしげはあの友達が言った通り、
万人受けする人間なんやもん。
もしあんな言葉を他の人に無自覚にも伝えたら、
絶対にその人はしげを好きになる。
それで俺が何回舞い上がって、
あかんあかんって自戒したか分からんほどやもん。
例えそれが友愛だとしてもだ。
「ほぼ八つ当たりでごめん。
もぉほんま、早く気にせんようになりたい…」
顔を落として
独占欲丸出しな自分に嫌気がさす。
これじゃあ食欲だって湧かないし、
しげと話だって出来ないかもしれないのに。
こんな自分が嫌だと
ずっと思ってるくせに変えられない。
片思いしてる時から、
付き合ってからもより酷くなっていそうで
いい加減呆れられても不思議じゃないくらいだ。
心が狭くて、カッコ悪い。
(やっぱ俺……全然、可愛くない…)
「……っ、かわい…」
「…は？」
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年3月1日 23時
