あかん、めっちゃ好き。【赤緑】 (ページ40)

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［あの日の夏］ページ40

緑side

「まだ暑いな〜」

「でも夏って感じでええよな」

氷水の中から選んだジュースが袋を冷やしながら
ポタポタと砂浜へ雫を垂らす海辺。

自然と揃う歩幅を進めながら
パラソルへの道なりを歩けば
不意に風が吹いて
心地いい気持ちよさに目をつぶった。

ゆっくりと目を開ければ、
まだ輝くように光が反射して波打つ海。

頬に髪が触れて、
それを耳へかければ
ほんの少し涼しくなるような気がした。

「……綺麗」

「ん？」

いきなり横から聞こえた言葉。

それへ反応するように隣のしげへと顔を向ける。

するとどうだろうか。

「ゎ…」

海や空が広がる景色でもなく、
耳心地のいい波音でも潮風でもない。

溢れたようにそう言ったしげは、
ただ真っ直ぐに…俺だけを見つめていた。

それがどこか懐かしくて、胸が締め付けられて。

まるであの日にタイムスリップしたかのように、
不思議な感覚がリンクしていくようだった。

だからなのかもしれん。

「…神ちゃん」

苦しいくらいの優しさを含んだ目で、
俺の頬へと手を伸ばすしげ。

その仕草から伝わる気持ちがぶわりと溢れて、
また息が止まりそうになった。