パンが46個 ページ46
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まさかメンバーに話されているとは思わなかった。申し訳なさがふつふつと湧き出ているのが自分でも分かる。
それすらありがとうと伝え、丸め込もうとしてくる彼には勝てそうになかった。
あぁ、だめだ。色々と失敗したかもなぁ。
未だに寒いこの時期に、心までも冷えていく。好きって伝えられたら良かったけど、今の精神状態じゃどうにもこうにも伝えられそうにない。
ちらほらと花や紙袋を持った高校生が駅前に溜まっているのがわかる。
そっか、やっぱり今日が卒業っていう子もいるんだなあ、なんてぼんやりと見つめて、さっきのさくらパンが頭にチラつく。私はそっと下に目線を変えた。
「………私、帰ります」
「え？……急ですね」
一旦心を落ち着かせたくて。
そう言えるはずもなく、すんなりと立ち上がって彼を置いていく勢いで歩き始めた。メンバーの方にも褒めてもらって、彼自身にもお礼を言われて、正直嬉しさなんてとうの昔から感じていた。ただこのタイミングでファンと言ったのは間違いだったのではないか。
なぜ今言ってしまったんだろう、という後悔を消したくて、彼の顔を見るとどうもそれを強く思い出してしまって、早く家に帰ってベッドに飛び込みたいと考えてしまう始末。
正直自分でも馬鹿だと思う。でも好きな人の前で失態をした以上、恥ずかしさで立ち去りたくなることなんて全人類有り得ることだろう。
「っ…朝凪さん！」
「…………なん、ですか…」
きゅ、と掴まれる手のひら。触れられたのは初めてだった。
思わず立ち止まる足。それと同様、思考停止する頭。
指先がお互い冷えているはずなのに、冷えると感覚は無くなるはずなのに、今はそこだけに感覚が集中していてだんまりしてしまう。
手が繋がれている。好きな人と。
「……っ……まってください、」
「……帰って冷静になりたいんです。
今一緒にいると、調子狂う、」
思わず敬語が外れるくらい、そして本音が漏れるくらいに自分の調子はおかしかった。あぁ、早く帰らせてくれ。今走ればきっと、高校以来の長距離走の自己タイムは更新できるはず。
そこまで考えて、未だ離してくれない手を払おうと振り向いた時だった。
「いいですよ、狂うくらい」
「は、」
ぎゅ、と今度こそ離さないと手から力が篭もるのがわかった。
それと同じタイミングで目が合う。
檸檬色の透き通るような綺麗な瞳は、私を真っ直ぐと捉えていた。
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かめそん(プロフ) - 猩2蠅さん» 猩2蠅様、はじめまして。本当に本当に嬉しいお言葉ばかりで口角が上がりまくりです。自分の作った作品をそのように言ってくださると完成して出せてよかったと思えます。最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。 (3月3日 15時) (
レス) @page37 id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
猩2蠅(プロフ) - とても、とっても、素敵な作品をありがとうございます。これから先、きっと、これ程生きて、出会えて良かったと思う事はないと思います。寒い日が続いておりますが、どうかご自愛ください。長文失礼致しました。 (3月3日 11時) (レス) id: 116d33f0d8 (このIDを非表示/違反報告)
猩2蠅(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。もどかしくて甘酸っぱい、2人の距離感に思わず悶えてしまうような、素敵なお話でした。こんな真っ直ぐなpeさんを執筆していらっしゃる作者様を今まで知らなかったことを恥じ入るくらいです。月並みな事しか言えず申し訳ないのですが、 (3月3日 11時) (レス) id: 116d33f0d8 (このIDを非表示/違反報告)
かめそん(プロフ) - kadさん» kad様はじめまして、コメントありがとうございます…！とてもとても嬉しい言葉ばかり並べられていて作者本当に幸せです……こちらこそそう言って頂きありがとうございます…！他の作品もあるので是非色んなお話楽しんで頂けたら幸いです！ (1月11日 1時) (レス) @page50 id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
kad(プロフ) - はじめまして！いきなりのコメント失礼します。本人たちの心情や表情がこんなにもダイレクトに胸に刺さる作品は初めてです。ドラマを見ているようでめっちゃキュンキュンしました！！この作品は私の人生の中の1番好きな作品です。素敵な作品をありがとうございます… (1月10日 0時) (レス) @page50 id: cd1f1b853a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かめそん | 作成日時：2023年1月2日 1時
