陽だまりの様なイカ様 (ページ3)

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「…きて、ねぇ…お、て」

体が揺すられている気がする。
ハッと意識が浮上して、目を開けるとそこには柔らかな笑顔をうかべた男性がいた。

「良かった、目が覚めて」

『ぁ、…息ができる』

「はは、そりゃあ船の上だからね。
君は遭難者？…まさか魚に運ばれてる人を見つけるとは思わなかった」

『魚に、運ばれる？』

「そうだよ？ほら、君のことを心配してるのかずっと着いてくるんだ」

そう言いながら海を指す姿に首を傾げながら海を覗き込むと、確かに船と併走するように魚群が見えた。
私が顔を出したのがわかったのか、魚達は水面に顔を出したり飛び跳ねてその存在を主張してくる。

『…どうして？』

「さぁ、君のお友達なのかと思ったけど違うんだね」

『まぁ、どちらかと言えば美味しそう…』

「ぷ、ははっ！遭難してたならお腹も減るか。
すぐになにか用意するよ、待ってて」

呟いた言葉の後に盛大なお腹の音が鳴り響き、男性はそのまま船の中へ戻っていった。
1人になった甲板でぐるりと周りを見渡してぼんやりこの先を考える。

(早くそこから離れて…！)

(そこの人間は危ないよ、早く海へ帰ろう！)

『？…誰、危ないって？』

「どうかした？」

ザワザワと聞こえる誰かの声を探しているとさっきの人が戻ってきた。
にこやかな顔のまま美味しそうな料理を私に手渡す姿には特に危険な所は無さそうだけど。

「さ、お腹がすいているんだろう？遠慮せずに食べなよ」

今思えばどうしてそんなに早く料理を用意できたのかとか、色々おかしなところはあったのに。
私は目の前の料理にそんな事微塵も考えずにがっついて、全て食べ切る頃には猛烈な眠気に襲われた。