陽だまりの様なイカ様 (ページ2)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:1,100 hit

プロローグページ2

お腹がすいた。
とても、とても。

フラフラとする足を踏み締めて、霞む視界に涙が出て必死に擦るよう拭った。
きっと私はこのまま何も食べれなければ死んでしまうのだろう。

海賊に村を襲われたのは数日前の事、死んだ母の下で私は生きのびてしまった。
気を失っていたらしい私以外は皆酷い殺され方をして道端に転がされていた。

『しにたく、ない…』

村にあった食料や金品は全部消えていた。
今日までは道に落ちた踏みつけられた食材や木の実で何とか生きていたけど、遂にそれらしいものも見当たらなくなって。

『……こんな浅瀬に魚なんて来ない、か』

足を引き摺ってたどり着いた海辺にも何も落ちてはいない。

『？…なんのにおいだろう、甘い匂い？』

海風に紛れて微かに甘い匂いがした。
夢中でその匂いを嗅ぎとって、縺れる足を必死に動かしてたどり着いた先にはブドウがひと房落ちている。

『私の知ってるブドウは青くない。
でも、これを食べなきゃきっと私は…』

明らかにおかしな色のブドウだったけど、目を閉じて思い切りかぶりついた。
口にした瞬間あまりの不味さに一瞬吐き出しそうになって、何とか飲み込む。

甘い匂いとは全く別物のマズさに涙さえ出たけど、お腹に入ればなんでもいいと一気に食べ尽くした。

『っ…！な、にっ息が…！』

全て食べきって一息ついた瞬間だった、突然息が詰まって呼吸が止まる。
必死に鼻から空気を吸っても全く入ってこない酸素に目が回り、そのまま私は海に倒れ込んだ。

やっぱり変な色の食べ物なんて食べるんじゃなかった。