6call 嫌だなんて言えなくて ページ7
わたし達は高校生になった。幸い、わたしは勉強が嫌いではなかったから、花京院くんと同じ学校へ進むことが出来た。
ただ高二の春、彼は転校するとわたしに告げる。
「転校なんて、一体どこへ行くの?」
「そう遠くはないさ、会える距離だし電話もする」
「そう……」
「その前に、家族とエジプト旅行をするんだ」
花京院くんはいつもよりほんの少し、嬉しそうにはにかんだ。
そして現在、花京院くんはエジプト旅行から帰ってきた。引っ越しを終えても、彼は忙しそうだった。
「花京院くん、何か忙しそうだね」
「Aには、隠せそうもないな」
電話越しの声でも分かるほど、彼は朗らかに笑う。珍しい、彼が何かに対してワクワクしている様子は非常にレアである。
「実はぼく、またエジプトに行こうと思ってね」
「また、家族で旅行にでも?」
「いいや、ぼくの命を助けてくれた仲間と行くんだ」
「命……?」
不穏な言葉だった。花京院くんは命を落としかけた、ってことが火を見るよりも明らかなのだ。
「A、エジプトへ行く前、君に会いに行く。そこで全て伝えるよ」
「えっ!本当?」
「ああ、でもその後はしばらく会えなくなりそうだ」
「そう……なの」
花京院くんは上げて落とすのが得意。花京院くんに会える喜びと、また会えなくなってしまう心寂しさで切なくなる。
「じゃあ、またその時に、ね」
「うん、またね」
通話が、切れる音。ツーツーという無機質な音。心苦しい、喪失感で胸がいっぱいになる。昔は、こんな喪失感を両手いっぱいに抱えて息をしていたというの?
今は、呼吸すら煩わしいと感じるのに。
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作者名:山葵しょうちん | 作成日時:2017年10月4日 2時