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88話 あの場所へ ページ42

Aside



「お世話になりました」



そんなことを呟き、荷物をまとめて部屋からこっそり抜け出した。

近くに人もおらず、誰にも顔を合わせないで出ることができたのは奇跡だ。そのことに安堵している自分は、本当に臆病者で情けない。

長い間お世話になっておきながら、手紙一つで片づけてしまうのはどうなのかと思った。でも、今の私には、彼らと向き合う資格がない。

お世話になっていた間、使わせてもらっていた着物や小道具を綺麗に整え、鬼殺隊の隊服から消防官の服装へと着替えた。これでもう、後戻りはできない。



「……ごめんなさい、最後まで何もできなくて」



誰に対しての謝罪なんだろう。何もできなかった自分への戒めか、別れの言葉も直接告げず離れていくことへの罪悪感なのか。私がこんな気持ちになっていいはずがないのにね。

暗くなる気持ちを押し殺し、流れ出そうな涙を強く拭った。泣いている暇はないんだ。とにかく急いで、原因を探しに行かないと。



***



敵がいる場所は把握できていない。あの焔ビトが現れるまで、その存在がいることさえも頭に入れてなかったんだから。それでもこうして迷うことなく、目的地へと向かっていけるのは、大体の見当がついているからだ。



『みんな離れるな!!』

『うわぁ!……っ何これ眩し―――』


敵アジトに、ネザーに突入してすぐだった。

白い煙幕が目の前で広がり、仲間の位置が把握できなくなったのは。大隊長は離れないよう指示していたけれど、混乱する私達にその声が届いても対応することができなかった。

……覚えていなかったんじゃない、忘れていたんだ。


来た道を戻るように、私はあの場所へと飛んでいく。

気を失ってから目を覚ました時にいた―――あの森。私が初めて“鬼”という存在と遭遇し、それを倒す組織である鬼殺隊と出会った場所。

もしこの世界に来たことが偶然であるならば、焔ビトが現れることはなかっただろう。けれど、もう遅い。私は目の前でその存在を見てしまったんだ。


見覚えのある地形にたどり着いた私は、そこへ着地した。

辺りはとても静かで、川のせせらぎと木々が揺れる音だけが響く。そんな中、森の奥深くからガサッという足音が聞こえてきた。咄嗟に私はそっちを向いて身構えた。





「……第8の一人か。まさか生き残っているとはね」






姿を現したのは―――白装束を着た伝導者(やつら)だった。








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☆りんご☆(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます! 宇髄さん流に褒めていただきとても嬉しいです! もっと派手に盛り上がるよう頑張りますね! (2020年3月13日 0時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めちゃくちゃ面白いです!もう派手派手です((←更新頑張ってください! (2020年3月8日 16時) (レス) id: a5bea457da (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます! 炎炎ノ消防隊はアニメしか見てないですけど、面白いので是非見てみてください!! 時間はかかりますが頑張ります! (2020年3月7日 2時) (レス) id: b4140779db (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - すごくおもしろいです。炎炎の消防隊は読んだことがなかったのですが、この夢小説を読んで興味がでました。続きが楽しみです。 (2020年3月5日 23時) (レス) id: 999b324e53 (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) -  夜桜さん» コメントありがとうございます! そこまで楽しみにしていただけてとても嬉しいです(*´ω`*) 納得のいく文章を考えるのに時間がかかりますが、早くお届けできるよう頑張ります(`・ω・´) (2020年3月4日 1時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:☆りんご☆ | 作成日時:2020年2月25日 15時

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