84話 儚いもの ページ38
「煉獄さん」と呼ぶ私の声に、彼は「菅野原少女、手当ての方を――」なんて避難状況を見て指示を出してきた。その言葉に申し訳なさがあったけれど、言わないといけないと思い、私も言葉を続けた。
「……単独行動を許してださい。説教ならいくらでも聞くんで」
「む、何を言って―――菅野原少女!? どこへ行く気だ!?」
言い終わる寸前で私は両足の炎を噴射し、猛スピードで元凶となったものへと近づく。その姿は、私が今まで見てきたものと同じだった。ただ違うことは、それに自我が多少なりともあったことくらいだ。
「……ぁ、ぐあ……つ、妻に会わせろぉぉ……!」
「……っ……」
その台詞を聞いた私は、脳裏にある人物を思い浮かべていた。
『夢であっても、会えるのなら会いたいだけなんです―――亡くなった妻と娘に』
悩み続けた顔で苦し紛れにそう言っていた―――車掌さん。
炎に包まれた人物が何者であったのか、私は分かってしまった。
「……避難、誘導……してくださっていたんですね……」
最終車両らへんにいるところを見れば、ここまで声をかけてきたことが分かる。乗客のために、自分ができる精一杯のことをしてきたことが痛いほど伝わってくる。
「妻と娘にぃぃ!」と叫びながら辺り構わず火を振りまく車掌さん。ボウボウを燃え広がっていく炎。それから逃れるため、大勢の人達が火のないところへと駆けていく。
「……大丈夫です。私は決して逃げない」
両手に炎を灯し、「ぐわぁぁ……!」と叫び続ける車掌さんに向かっていく。
「(居合 手刀 弐の型……爆炎)」
両手を重ね、大量の炎を放出し、車掌さんの胸元へと当てる。一点に集中した攻撃によるボコォッという皮膚を突き破る鈍い音とともに、消えていく車掌さんの体。
「……よく、頑張りました。あなたの勇姿を私は忘れませんっ……!」
パラパラと散っていく体。
火の粉と混じり合って風に吹かれていく灰。
(……お嬢さん……あなたには感謝している……ありがとう……)
耳に響いてくる車掌さんの声。
顔なんて見えないはずなのに、どこか笑っているように思える。
(これで……妻と娘に……会いに、いける……)
スゥゥ…と消えていく車掌さんの魂。草木に広がった火はまだ燃えているけれど、私の目の前にあった大きな炎は消えている。
「……どうか安らかに……」
―――残ったのは、車掌さんが身に着けていた帽子だけ。
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☆りんご☆(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます! 宇髄さん流に褒めていただきとても嬉しいです! もっと派手に盛り上がるよう頑張りますね! (2020年3月13日 0時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めちゃくちゃ面白いです!もう派手派手です((←更新頑張ってください! (2020年3月8日 16時) (レス) id: a5bea457da (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます! 炎炎ノ消防隊はアニメしか見てないですけど、面白いので是非見てみてください!! 時間はかかりますが頑張ります! (2020年3月7日 2時) (レス) id: b4140779db (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - すごくおもしろいです。炎炎の消防隊は読んだことがなかったのですが、この夢小説を読んで興味がでました。続きが楽しみです。 (2020年3月5日 23時) (レス) id: 999b324e53 (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - 夜桜さん» コメントありがとうございます! そこまで楽しみにしていただけてとても嬉しいです(*´ω`*) 納得のいく文章を考えるのに時間がかかりますが、早くお届けできるよう頑張ります(`・ω・´) (2020年3月4日 1時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆りんご☆ | 作成日時:2020年2月25日 15時