【鬼滅の刃】消させないよ、誰にも その2【炎炎ノ消防隊】

79話　避難開始 ページ33

「っ……くっ……！」



……思ったよりも車両が重い。

斬り落とされた頸以外の全車両を炎の威力で持ち上げる。そうすることで、窓から脱出する余地ができる。そのためには、人が飛び降りても平気な高さを保ち続けなければならない。

炎を微調整することは簡単だ。ただ、範囲が大きすぎると放出する炎の威力を一定に保つことは難しい。私がそのことに意識しなくなった瞬間、暴発する可能性もある。

乗客乗員の正確な人数は分からない。鬼の言うことを信じるのなら、ここにいる人は200人余りだけど。それでも避難には相当時間がかかるだろう。

自力で動ける人はともかく、今だ鬼の眠りから覚めない人、怪我をして動けない人もいるかもしれない。そうなると、避難誘導をしている煉獄さんやそれに従っている善逸達の判断力に委ねるしかない。



「……持って…っ…あと、少しだけ……！」



徐々に傾き始める車両を平行に保ちながら、近くの草むらに避難している人を確認する。

煉獄さんがまだ来ていないということは、避難が完了していないということ。持ち上げてるから車両の下敷きになっている人はいない、はず。

呼吸を深くし、体内に多くの酸素を送り込む。目をつむり、さらに意識を集中させていると下から誰かの叫び声が聞こえた。



「菅野原少女！！ 全員の避難が完了した！ もう降ろしていいぞぉぉぉ！！」

「れん、ごく…さん……っあ！」



一気に気が抜け、重力に従って落ちていく感覚に襲われる。咄嗟に私は「線路から離れて！！」と叫び返した。ドシャァァンッという大きな地響きと大きな砂ぼこりが私を襲う。



「菅野原少女ぉぉぉ！！」

「っ……げほっ……」



ボコボコと上がる砂ぼこりに、少し焦げ付いた車両。地面に叩きつけられる前に空へ飛んだ私は、その光景を見ながら成功したことに安堵した。







「……避難できてる……！」








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