62話 胸騒ぎ ページ16
しのぶside
全集中の呼吸。
肺を大きくし、血中に大量の空気を取り込むことで、爆発的に力を増幅させる。育手の元で修業をし、鍛錬を繰り返すことにより会得することができる。
いくらAさんの能力で鬼を退治することができるといっても、この呼吸法は簡単に会得できない。相当な努力と忍耐力が必要になってくるし、実践を繰り返す中で技に慣れていくものである。
けれど―――。
『スゥゥゥゥ……』
Aさんは、私の説明だけで全てを理解し、全集中の呼吸を会得した。それだけでなく、意識を集中させたあたりから、全集中の呼吸を使った何かの技を編み出そうとしていた。それは呼吸法でもなく、剣術でもなく、Aさん自身の能力が向上する何かだった。
室内なのに火を扱ってしまったせいか、Aさんは慌てて消火準備を始めていた。その様子をぼんやり眺めながら、先ほどの呼吸を思い返す。
「……」
あれは、初めてやるような感じではなかった。既にやり方を知っているような感覚。何をどうすれば呼吸法が身につくのか、全集中につながるのかを分かっていたように思える。
『かなに会ったんだ』
以前、柱合会議でお館様はAさんとの昔話をしてくださった。鬼に襲われたところを助けたと。ならばその時に……お館様自ら教えた可能性も考えられる。
「……Aさん、あなたは一体……」
この数か月間、彼女の性格は理解したはずだ。
他人への気遣いを忘れず、懸命に蝶屋敷での仕事をこなしてくれていた。本当は元の生活、元の居場所へと帰りたいはずなのに、そんな気持ちを感じさせないくらい元気に過ごしていた。
そんな心優しく、強く、元気であろうとする彼女の姿を見て、“得体の知れない奴”なんて思えるはずがない。一人の鬼殺隊の仲間として、友として、彼女を支えてあげたいとそう思った。
―――何者か、なんて。
まるで怪しむようなことを思ってしまった自分に嫌気がさす。どうして信じてあげることができないの。彼女が嘘をついたり、騙したりするような人ではなことは分かっているはずでしょう。
「も、燃えてないですよね!? 本当にごめんなさい……私、外で鍛錬してみますね!」
「あ…は、はい。分からないことがあれば、炭治郎君達が教えてくれるはずです」
「はい! ありがとうございました!」
―――嫌な予感がするのは、気のせいでしょうか。
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☆りんご☆(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます! 宇髄さん流に褒めていただきとても嬉しいです! もっと派手に盛り上がるよう頑張りますね! (2020年3月13日 0時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めちゃくちゃ面白いです!もう派手派手です((←更新頑張ってください! (2020年3月8日 16時) (レス) id: a5bea457da (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます! 炎炎ノ消防隊はアニメしか見てないですけど、面白いので是非見てみてください!! 時間はかかりますが頑張ります! (2020年3月7日 2時) (レス) id: b4140779db (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - すごくおもしろいです。炎炎の消防隊は読んだことがなかったのですが、この夢小説を読んで興味がでました。続きが楽しみです。 (2020年3月5日 23時) (レス) id: 999b324e53 (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - 夜桜さん» コメントありがとうございます! そこまで楽しみにしていただけてとても嬉しいです(*´ω`*) 納得のいく文章を考えるのに時間がかかりますが、早くお届けできるよう頑張ります(`・ω・´) (2020年3月4日 1時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆りんご☆ | 作成日時:2020年2月25日 15時