1章 ページ2
「千葉から越してきた守田朔くんです。皆さん仲良くしましょう」
モリタ サク
彼と出会ったのは小学一年生の秋。まだモミジが色を変える前のこと。
「よろしくおねがいします」
まだまだあどけない口調で彼は一言呟いていた覚えがある。たぶん彼は恥ずかしがりやだから、それが精いっぱいだったんだと思う。
「じゃあ朔君はるいちゃんのとなりの席に座ろうね」
そう担任に指名された瞬間、彼は私の方を向いて不安そうな顔をした。
それこそ、まだ兄に頼り切っていた私もきっとひどい顔をしていただろう。
モミジが入ってくる窓側、それが私の特等席。山田るい、なんて書いてある札がぐしゃぐしゃに置いてあったのはよく覚えてる。整理整頓が苦手だったんだ。
机の奥にためられてからつぶされたプリントの音を響かせる私の印象なんて、きっと覚えていないんだろうけど、それでも今思うと本当に恥ずかしい話だ。
「よろしくね」
「うん、よろしく」
最初の会話なんて思い出せやしないけど、たぶんこんな感じだった。
お互いやっとの気持ちであいさつをしたのに、私は彼の眼を見ることはできなかった。
恥ずかしがりやはどっちだか、と自分に責を入れる。
まだ小学一年生。自分はヒーローに憧れるような、格好のつかない女の子だった。
この3年後、私は道を誤る
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作者名:せづ(仮) | 作成日時:2021年2月7日 23時