過去と今と未来と (ページ21)

今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:170,623 hit

. ページ21

「あの子は、あの子は大丈夫なの？」

父に問いかけてもなにも答えない
ただ小さく首を振っていた
子供ながらにそれが何を意味しているのか分かり
どうしてあの子が...と考えていた
そこで渡辺は友人との会話を思い出した

「あのね、俺凄いの見つけた！」

そう言って友人が見せてきたのは大量のライターだった
どうしたのそれ、と聞けば

「なんかここの駐車場の近くに落ちてた」

と答え

「置いてあっただけじゃないの？危ないから戻してきた方がいいよ」

そう諭しても友人は聞き入れようとせず

「さっき試したら全部バッチリ着くんだよ、だから、
部屋の庭の落ち葉燃やしてみよっかなって思ってる」
「ダメだよそんなことしたら、火事になったらどうするの？」

さっきよりも強めに言っても友人は聞かず、そのまま部屋に戻って行ってしまった
流石にあんな事はしないだろうと考えた渡辺はあまり深くは考えず食事をし温泉に入るとすっかりその事は忘れてしまっていた

その友人は部屋に戻ると、食事をした後、両親が温泉に向かった隙を見計らい庭へと入った

まずは落ち葉を一枚手に取り、火をつける
端から少しずつ焼けていくがすぐに消えてしまった
何枚かそう燃やし、もっと大きく燃えて欲しいと考えた友人は、火をつけた数十枚の葉を掻き集めた落ち葉の中へ放った
そのままにして何事も無かったかのように部屋の中で両親の帰りを待ち、火は大きくなっているかな、と時々確認するが大きくなってはいなかった

消えてしまったのか残念、また隙を見計らって片付けよう、そう考えていた
しかし少しすると何かが焦げた匂いがし始めた

もしかしたら綺麗に燃えているのかもしれない、そう期待して閉めていた障子を開けるとそこには真っ赤に燃えていた
木々に火が移って、激しく燃えており焦って消さないと、と部屋の窓を開けてしまった

そこからはすぐに障子に火がつき、どんどん部屋の中も燃えていった

家族全員で必死に火を消そうとするが中々消えない

自分がしてしまった事の重大さに気づいた時には
旅館全体に煙が充満していて、逃げようとした頃には
廊下へ出ると屋根が崩れ落ちていて身動きが取れなくなっていた