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渡辺は友人が事の発端であると気づいた
焼け落ちる旅館を見つめ友人の名前を叫ぶが返事は返ってこない
真っ赤に染まった海のようだ、と野次馬の中の誰かが言った
そういえば友人は海が好きだった
だからこの旅館を選んだと友人の両親は言っていた
「海は青いけど今回は紅葉でできた小さな赤の海が見えるかもしれないんだよ!」
友人はそう楽しそうに話していた
ああ、あの時もっと強く言って止めていればこんな事にはならなかったのに
唯一この火事の真相を知る渡辺は友人の為に何も言わないと決めた
正しい判断ではないかもしれないが友人の今までに苦悩を知っていたから友人の事を責められなかった
渡辺は燃え上がる炎を見つめたまま両親が名前を呼んでも、肩を叩いてもどれにも反応はしなかった
大きな赤の海、彼が望んだものではなかったけれど
彼が遺した最後のメッセージだとそう考えてただ燃え上がる炎が小さくなるまでずっと見つめていた
火が少しだけ小さくなり両親の問いかけにようやく反応した渡辺はそのまま意識を飛ばし、起きたら病院のベットだった
渡辺は旅行に行った事、友人の事を一切覚えていなかった
あの事件に関係する事だけ、綺麗さっぱりと
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作者名:coolk | 作成日時:2020年3月13日 19時