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「サトシ、なにがあったんだよ」
カズの悲しげに震える声は、今のサトシの耳に届かない。
深い傷から応急手当しながら、カズは懸命にサトシに話しかける。
「深手は左の大腿と右の脇腹」
隊服はあちこち無残に引き裂かれ、剥き出しの脇腹からの出血はジワジワと続いている。
大腿部の傷は時間が経っているようで出血は治まりつつあるが、血で汚れた傷口は明らかに熱を持っている。
その傷に応急処置を施すカズ。
水筒の水で傷口を洗い流し、軟膏を塗りつけた薬草をあてがって包帯で覆う。
次に、つい先刻まで細剣の柄をくくりつけていた右手。
カズは眉をひそめ、細剣の柄を握っていたままの形で動かないその手を見つめる。
(麻痺してる…のか)
右腕の傷のせいだということはすぐに見当がつく。
「それにこの右腕だね」
明らかに固まって動かない血まみれの右手をそっと取り優しく声をかける。
「右手は何も感じないの？」
冷たい感触に息が詰まる。
「…固まってる…ね。けど…」
次第に声が震えてくるのをどうする事も出来ない。
「…大丈夫」
「帰ったら、もっとちゃんと手当しなきゃなんないけど、任せて。
俺が…綺麗に治してあげる…から」
それでも心が折れそうになるのをこらえ、痛みすら感じないのか、されるがまま無反応なサトシにカズは話し続ける。
「サトシ」
「ねえ…なんか言ってよ」
光を失ったサトシの瞳は澄んだガラス玉のようにただ、不安げなカズを映すばかりだった。
・
親衛隊長ライの訃報が国中を駆け巡ったのは翌日のことだった。
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「サトシはどんな様子だ」
昨夜、医務室で手当てを受けたサトシは、真白な包帯も痛々しい姿で寝台に横たわっている。
その深い琥珀色の瞳は何も映さずうつろで、未だ一言も発していないその唇は固く閉ざされたままだった。
「イール副長」
サトシに一晩中付き添っていたジュンが不安そうな顔を隠そうともせず、入ってきたイールを振り返る。
「昨夜から一睡もしないで、だけど何を言っても聞こえてないみたいで…水すら受け付けない」
サトシに視線を戻し、ジュンはその黒曜石の瞳を曇らせた。
親衛隊に激震が走ったその日、
ジュンはサトシのひどい状態に、心の臓を握りつぶされるような衝撃を受けた。
医務室での治療の後、付き添いを買って出たジュンは、それからずっと傍にいた。
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bunkichi(プロフ) - AKIRAさんこんにちは。心が通じ合ってる大宮のお話しも大好きです。ほんとにこの2人は一心同体だよね。魘されてる原因がもう1つあるんだね。上級魔道士ニノちゃん、なんとかしてあげて〜！ (2020年7月18日 5時) (
レス) id: b3195af20e (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - bunkichiさん» bunkichiさん、こんばんは。この数回の更新は四男とのエピ。不機嫌なふりしてめちゃめちゃ心配してる（笑）ここは元のお話を大幅に書き直しました。だって大宮だもん。大好きなシーンになりました。いちごじゃないけど楽しんでもらえたらいいな。次は移行しま〜す！！ (2020年7月18日 1時) (レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
bunkichi(プロフ) - AKIRAさんこんにちは。更新ありがとう。ライさんが亡くなった後、智くんは周りの人から非難されたりして辛い目に合うのかと思ってたから、少し安心しました。心の傷も体の傷も癒えてなくて苦労してるけど、がんばって健気だわ。続き楽しみにしてます。 (2020年7月11日 11時) (レス) id: 6cd85052c0 (このIDを非表示/違反報告)
bunkichi(プロフ) - えー！まだまだ辛いですって！智くんがかわいそうな目に合うのは慣れてるし、逆に可哀想で萌えちゃうから大丈夫。楽しみにしてまーす。 (2020年6月28日 19時) (レス) id: 6cd85052c0 (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - bunkichiさん» bunkichiさん、こんにちは。過去編も中盤（え、まだ中盤？）樹海から戻った長男に次の試練が…。そうです。まだまだ辛い！！可哀想だけど、さらに頑張ってもらいます。面白くないかもしれないけど、大事な課程なので。そして付き合ってもらえると信じてます（笑） (2020年6月28日 17時) (レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2020年6月6日 1時
