４ ページ4
アルプスに初雪が降った翌日、マサキたち家族を街へ送り出した。
「サトちゃん、風邪ひかないようにね。ご飯はちゃんと食べるんだよ」
まるで母親のように煩いマサキに、苦笑しながらも律儀に頷くサトシの手はユイが握っていて離さない。
「…」
「ユイ、もう行く時間でしょ」
そんなユイに優しく笑って屈みこんだサトシが視線を合わせる。
「…ユイね、ここでお留守番したいの。サトちゃんと一緒にいたい」
「どうして？」
「だって…ユイがいない間にサトちゃんいなくなっちゃわない？」
「なんでそんなこと思うの。おいらはちゃんとここで待ってるよ」
「…」
小さな唇を尖らせて俯くユイをそっと抱き寄せたサトシはその柔らかな髪を撫でる。
「赤ちゃんに挨拶するんでしょ。お姉ちゃんだよって」
「うん」
「だったら、パパやママと一緒に行かなくちゃね。おいらは街へは行けないからここで待ってる」
「わかった。ユイいってくるね」
「行っておいで」
ユイの小さな手がサトシの手から離れ、マサキの手を握る。
「じゃあ、サトちゃん、行ってくるね」
「うん、いってらっしゃい。マイさん、頑張って元気な赤ちゃん産んでね」
「はい。サトシさんも身体に気を付けて待っててくださいね」
「あの…えっと…」
少し俯いたサトシが何か言いたげに、俺とマサキを見比べるように視線を泳がせた。
「なんだよ、どうかした？」
そんなサトシを覗き込めば意を決したように顔を上げて口を開く。
「あ、あのっ」
「あー分かったっサトちゃん、いいよ」
サトシの声を遮ってマサキが大きな声を上げた。
「え、」
「マイのお腹触りたいんでしょ」
驚くサトシの手を取って、マサキはぐいぐいマイさんのお腹へと引っ張る。
「いいよね、マイ」
「ええ、もちろん」
笑顔で頷くマイさんの大きくせり出したお腹に恐る恐る手を伸ばすサトシ。
そしてまるで壊れ物にでもさわるようにそっと触れた。
「君の名前考えながら待ってるからね。元気に生まれておいで」
サトシはマイさんのお腹に向かって優しく囁くように声を掛けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 175人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
dango3104(プロフ) - お返事ありがとうございます(〃ω〃)休止中の心の隙間を素敵なお話を一気読みする事で何とか日々を乗りきっておりますm(_ _)m時にニヨニヨし、時に涙し、家族に不審がられようとも気にせず(￣∀￣)何とか智さん不足を補いつつ生きとります(ノ_＜)新作、楽しみにしてます (2022年4月6日 17時) (
レス) id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - dango3104さん» dango3104さん、コメントありがとうございます！最近は全然UPできていないのですが、何年も前のお話に新しいコメントを頂けるなんて感無量です！また書き始めているので新作ＵＰできたらぜひ読んでくださいね。 (2022年4月5日 23時) (レス) id: 30a2c7b7ee (このIDを非表示/違反報告)
dango3104(プロフ) - 最愛同様に深い愛ですね・・・涙が止まらないです (2022年3月28日 17時) (レス) @page29 id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年6月10日 12時
