白妙の衣は薄紫の花に埋もれて…２東京編 (ページ19)

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「もーショウちゃんってば、サトシが困ってるじゃん。その辺にしときなよ」
そう言ってサトシの肩に手を回してその顔を覗きこむ。

「ねえ、サトシ。楽しい？」
「うん、楽しいよ。ショウくんの話は難しくてよくわかんないけど、一生懸命なとこがいいなって思う」

「え…よくわかんない…ですか」
はた目にも分かるぐらいに肩を落として落胆するショウさんに、邪気のない笑顔でとどめを刺すサトシ。

「うん、ごめんね。ショウくんの話す言葉はきいたことないのばっかりでよくわかんない」

サトシはなんとか中学の勉強だけは履修したが、体調のせいもあり、その後は神楽舞いの踊り手をしながら神社で働いていた。

それを知ってたから、俺はサトシにはできるだけわかり易い言葉を選んで話をするように気を付けてたんだ。だからショウさんが申し訳なさそうに詫びるのをみて、先に言っておけばよかったとちょっと後悔した。

「またやってしまったな。僕は興奮すると早口になるし、専門用語が多くなるみたいで学生たちにも時々難しすぎるって指摘されるんだよね」

ショウさんは頭を掻いてすまなそうにそう言った。
今は東京の大学で教鞭をとるショウさんは、人に教えることのむずかしさを実感中らしい。

「そんなこと気にしないで。それより、村の人でもないのに神事に興味を持ってくれるのは嬉しいな。おいら、あの神楽舞いは大好きなんだ」

「俺も見てみたいな、その神楽舞い」
カズが羨ましそうに言えば、サトシはふわりと笑った。

「あの舞いはご神体の剣を使うから、ここじゃできないけど…
その前に舞う鈴を使う奴なら今ここで舞えるよ」

「見たい。見たいですっ」

カズより早くショウさんが勢い込んで返事をし、それに続いてカズが何度も頷く。

この二人はサトシが舞うところを一度も見たことがないからしょうがないけど、一回見た俺だって見れるもんならもう一度見たい。