白妙の衣は薄紫の花に埋もれて…１出会い編 (ページ21)

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…声変わり…？

「え、もしかして…あなた、男？」

「ふふっやっぱり。なんか、あれ？って思ってた。
マーくんがサトちゃんって呼ぶから誤解させちゃったね。
おいらサトシって言います。改めてよろしくね」
　
ふわりと柔らかな笑みを浮かべるサトシと名乗ったその人は、やっぱり男には見えなくて、俺はバカみたいに口をぱくぱくさせるばかりだ。

「だっからかぁ、ジュンがサトちゃんは俺の初恋の人か何かかって訊いたのは。
そんなわけないじゃん、サトちゃんは男なんだからさ」

「お前が紛らわしい呼び方するからだろっ」
マサキが素っ頓狂な声をあげたもんだから、急に恥ずかしくなった俺は思わず大きな声で反論する。

「美人さんだとか言うから、てっきり女の人だと思い込んでた。
それに巫女さんっていったら普通は女だろ」

「おいらは巫女さんじゃなくて神楽舞いの踊り手だから」
　
そう言ってクスクス笑うサトちゃん改めサトシさん。
そこらの女子より間違いなく可愛いよな、そんなことを考えながらだんだん打ち解けてきた空気感にほっとする。

「…いや、俺そういうのに疎いから違いが分かんないですよ」
「敬語はやめてよ。さっき言ってくれたでしょ、友だちだって」

「でも、マサキの二つ上なら、俺はサトシさんより三つも年下だし」
「サトシでいい。ムズムズするから、そんなふうに呼ばないで」

本当にムズムズするのか、その身体を震わせてしかめっ面で抗議するけど、その仕草がまた可愛くて俺は撃沈した。なんだこのかわいい人はっ

「あーあ、サトちゃん。だめだよ、そんなにかわいいことしちゃ。ジュンが真っ赤だよ」
「うるせー、俺のことはほっといてくれ。いろいろ混乱してんだ」
　
そうだよ、もう俺はパニック寸前だよ。女だとばかり思ってた人が男で、しかも男だっていうのになんでそんなにかわいいんだよ。

「ジュンくんって面白い人だね」
「…そんなことないよ。それに、俺のことはジュンでいいよ、俺もサトシって呼ぶからさ」

「それじゃあ、ジュン。
友だちに隠し事はしないってマーくんと約束したから、ジュンにも話すね。おいらのこと…」
　

決心したようにサトシが俺をまっすぐに見つめる。
鳶色の澄んだ瞳は俺を映して揺れている。