Ep.21 つまりもう逃げられないってことでよろしいか？ ページ23
＿＿＿まさに、地獄絵図とでも言うべきか。
接客復帰から数日後、その事件は起こった。
もうここまでくると一級フラグ建築士になったようにすら思える。
そう、もうお察しだろう。
『ご来店』である。
それだけならまだいい。どうにでもなる。
問題は、驚きすぎた私があの方の御顔を見て悲鳴……、悲鳴なんて可愛らしいものだったらまだ誤魔化しようがあったのかもしれない。私も選べるならそっちが良かった。
しかし、私の口から出たのは可愛い悲鳴ではなく、「ッ、ぅわ！」というあまりにも失礼極まりない音列で。
どうしてここに。
いや、その前に私、逃げ…いや、駄目だ、逃げられない。
何度も逃げていたらそれこそ不審だ。
自分があの方の目の前に立ってしまっているという事実に頭が追い付いていない。
「……」
店内に沈黙が訪れる。
驚いたように目を瞬かせたあの方の後ろで、「公子」が静かに肩を震わせているのがバッチリ見えた。
多分「うわ」っていう反応をすると思ってなかったからだろうが、絶対に許さない。
というか今まで「公子」が先に入って来ていたはずだ。
今日に限ってあの方が先に入って……いや、今日でなくてもあの方が先に入って来ていたら私は同じことをやらかしたと思うけれど。
「…っし、失礼いたしました！」
やっと事実に追いついた思考に従って、できるだけ深く頭を下げる。
許されるなら地に頭をつけて謝罪したい。
でもそれが「一般的な客と店員」のやり取りではないことくらい、わかっている。
……神だったときから、あの方がそれを望んだことがないことも。
「＿＿構わない、『公子』殿から多少の事情は聞いている。顔を上げてくれ。」
「……え？」
多少の事情って、何…？
ドッと冷汗が背中を伝う。
恐る恐る顔を上げれば、黄金の瞳がなんとも言えない表情をする私を映していた。
逃げたい。すごく。
…「公子」から何を聞いたのだろう。
まさか、「公子」にはとっくの前に私の記憶についての色々がバレてるってこと？
それじゃあ、鍾離様にも、それが、バレて…
どうしよう、が頭を巡り始めたその時
「…ふむ、自分の外見について特に気にしたことはないが…確かに『公子』殿の言っていた通りのようだな。」
「まさか鍾離先生、俺の話疑ってたの？ 酷いなぁ。」
鍾離様が腕を組むのと同時に、後ろで笑っていた「公子」が肩を竦める。
「………え？」
外見？
多少の事情って、まさか
＿＿＿＿＿
Ep.22 思い返すは唯一の景色。→←幕間 脇役達は何を知る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1307人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ブックマーク＠りんごおれ(プロフ) - ものすごく最高です応援しています！ (2023年3月4日 17時) (
レス) id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ありがとうございます……！ 大遅刻更新ですが、良ければこれからもどうぞよろしくお願いいたします……！ (2022年12月23日 22時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - とても面白い作品ですね！！楽しく読ませてもらっています。更新楽しみにしてますね！！！ (2022年12月2日 22時) (レス) id: 7981f63c4d (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - 有害物質さん» 読んで頂きありがとうございます！ 更新頻度は遅くなってしまっていますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです……！ (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ゆいﾋﾟさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます……！ もうなんと言いますかどんどん無料で読んで頂ければ嬉しいですといいますか……！ 良ければこれからもどうぞよろしくお願い致します…！！ (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろぐみ | 作成日時：2022年3月30日 16時
