Ep.22 思い返すは唯一の景色。 ページ24
「……璃月で一番綺麗な場所、ですか。」
「そう。もちろん鍾離先生から確実な答えは返ってきたけど、どうせなら先生以外の話も聞きたいと思ってね。」
目の前には一つのテーブル。
その両サイドで、ついこの間やっと出来上がった琉璃百合モチーフの料理の数々を口に運ぶ二人の男と、何故か引き留められた私。
そして何故か私を巻き込んだまま進んでいく会話。
もう本当にお家(厨房)に帰らせていただけませんか。後生なので。
色々な意味で心臓がさようならしそうです。冷汗と動悸が止まりません。
あれだけ回避に全振りしてたはずなのに、何がどうなったらこうなるのでしょう。
視線をどこに持っていけばいいのかわからず、ひたすら視線をさまよわせてしまっている。
仕方ないとはいえ鍾離様にこんな中途半端な接客したくなかった。
だが、優先順位というものが人生において間違いなく存在するのであって
最近の私の最高優先順位は間違いなく『認識されないこと』である。
手遅れという言葉が脳裏をよぎらないでもないが、そこはもう元・神の人間への興味のなさを信じるしかない。
まぁ、自分で「記憶力が良い」って言ってた人にそんな期待をかけられるほど楽観的でもないんですけどね!
「__璃月には名所が数多く存在するが、景色の感じ方は人によって異なる。美しい景色を探すなら人に聞くのも手だろうと助言はしたが」
近距離で聞こえた声。
跳ねそうになった肩をなんとか気合で抑え込んで笑顔を作る。
「なるほど、それで私に…。…私は頻繁に遠出をするタイプではないのであまり参考にはならないと思いますが…。」
「なんでもいいよ、思い当たるようなものがあったら教えて欲しいんだ。」
「公子」の多少何か含みのありそうな笑顔に気付かないふりをしたまま、お客様の質問にはしっかり答えようと記憶を遡っていく。
何かないだろうか。
自分が、美しいと思った景色。
__考えることに集中しすぎたのだろう。
コト、と茶器がテーブルに置かれた小さな音に驚いてそちらを見ると、私が驚いたことを不思議に思ったのか。
こちらに視線を向けた鍾離様と、目が合った。
「___あ。」
月下に凛と咲く青と白の花がフラッシュバックする。
ダメだ。そう理性が止める前に、その言葉はあっけなく唇から零れていった。
「__荻花洲に琉璃百合の花畑が、あって…」
……あって…?
…待て、違う。これは、言ってはいけない。
だってあの場所にもう、花畑なんてないのだから。
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ブックマーク@りんごおれ(プロフ) - ものすごく最高です応援しています! (2023年3月4日 17時) (レス) id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ありがとうございます……! 大遅刻更新ですが、良ければこれからもどうぞよろしくお願いいたします……! (2022年12月23日 22時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - とても面白い作品ですね!!楽しく読ませてもらっています。更新楽しみにしてますね!!! (2022年12月2日 22時) (レス) id: 7981f63c4d (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - 有害物質さん» 読んで頂きありがとうございます! 更新頻度は遅くなってしまっていますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです……! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ゆいピさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます……! もうなんと言いますかどんどん無料で読んで頂ければ嬉しいですといいますか……! 良ければこれからもどうぞよろしくお願い致します…!! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろぐみ | 作成日時:2022年3月30日 16時