HPが擦り減りゆく【そ.ら.る.】 (ページ3)

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『…あの一瞬のデレは何だったんだろう…………。分かる？真冬ちゃん』

「うーん、ボクはAにだけ何で彼方さんが冷たいのかわかんない…………。あっ！ていうかちゃん呼びやめてって言ったよねー！」

『真冬ちゃん、そういうところが可愛すぎてやめられないんだよ』

「悟り開いたような目をやめて」

相変わらず可愛いなぁ…。

一ノ瀬君がシャー芯をくれて一週間。

昼休みに必ずご飯に誘ってくれる真冬ちゃん、もとい相川真冬君。屋上から校庭で遊ぶ人達を眺めながら牛乳を飲む。

『真冬ちゃん今度女装しない？』

「いきなり何言い出すのこわ…」

冬は寒いので苦手だが、彼と話している時はとても楽しい。いや、もう、癒し。

あっ、今あの男子転んだ。

「中学からAは変わらないよね－」

『中学から君の女子力盗もうと思ってたけど無理だった』

横でフェンスによっかかりながら雑談する彼。中学からの同級生で良き相談相手。

何故か、何故か一ノ瀬君と仲が良い。

さらさらとなびく髪を背伸びして撫でると、少し驚いたようにこちらを見て直ぐにへにゃぁ、と微笑んだ。

殺傷能力がバカ高い笑顔。

可愛過ぎて自分が女だと疑いたくなる。

『…一ノ瀬君ホント嫌だ』

「いい人なんだけどね－」

『顔だけはイケメンなのに…』

「溢れ出る色気…。ボクも欲しいです…」

泣きまねをする真冬ちゃん。なくなりそうな牛乳を吸いながら真顔で色気
のある彼を想像するが、全く浮かばない。

若干ナルシな方向に向かう気がする。

「なっ！何で笑うのさっ！」

『…まっ、真冬ちゃんがっ、色気とか、あははっ！』

「………Aよりはあるし……………」

『聞こえてんだよ。あ”？』

「ひぃっ！すいませんでしたぁぁああ！！」

一応ニッコリと笑っておいた。

すると真冬ちゃんが本気で土下座しそうになったので慌てて謝った。

私、色気ないのかな…………。悲しみ。

ずずッと音がしてもうなくなったのか、と口を離す。彼は面白そうに運動場の様子を眺めている。それすらも可愛いとは…解せぬ。

まぁ自分は顔が普通なのは知ってるし、特別頭が良くないのも知ってる。だから心だけは親切でいようと思うが、なかなか難しいもので。

そういう面では、誰にでも手助けする真冬ちゃんを尊敬する。

『…お願いだから普通に接してくれよぉぉ…』

「彼方さん？ん－…。じゃあさ、しばらく無視して見れば？」

『無視？』

「うん。何か変わるかも」

ほう。やってみるか。