1話 ページ2
その日は地味にツイていなかった。
※
あれ？ と思った瞬間には、時計は既に起床予定時刻の15分後だった。目覚ましのスヌーズを止めて、珍しく二度寝をしてしまったらしい。元々寝起きが悪い方ではないので、特に遅刻ギリギリな時間ではないものの、台所に立つまでの身支度は少々忙しないものとなった。いつもの仕事着のシャツを着るにも、ナチュラルな薄化粧をするにも。
何とか普段のルーティンに戻り、朝食の準備を始める。料理は楽しいけれど、私の職場であるファミレスでは私はホールとして働いている。立ち仕事に接客業、朝は食べなければ動けない……と、とりあえず目玉焼きを焼こうとしたのだが。卵は「ぱきゃ」と小さな音を立てて、パックの中指先で潰されていた。偶然殻の弱い卵だったらしい。一瞬硬直した私は気を取り直し、割れたのは上部だけだからとそっとその卵を取り出し、熱されたフライパンへぽちょりと落とした。
いつも見ているニュースのコーナーが、今日はゲストの関係で休みだった。昨日畳っぱなしだったタオルの山に躓き、タオルは見事にぐしゃぐしゃに。そして躓きよろけた先、靴下で踏んだのはケトルのお湯かなんかの水滴。ワンポイントだけ含まれた水分がどうにも気になる靴下になってしまった。
とはいえ連続して小さなミスが起こっただけで、大したことではない。こんなことまで気に出したらキリがない。寝坊はしたけど起きている、身支度も普通。目玉焼きも卵は割れたけど、食パンは焦げなかったし美味しかった。ニュースは来週にはまたそのコーナーはやるそうだし、タオルは自業自得でまた畳めば良い。靴下はいずれ乾く。そう、気にしなければ大したことはないのだ。
「コンセントよし、ガスよし、鍵持った…………行ってきます」
カーテンが開けられたワンルームから少し離れた玄関先で、指差し確認をする。それから、誰もいない空間にも一応出勤してきますと挨拶をして。変な刺繍がお気に入りのトートバッグを肩にかけ直し、ゆっくりと玄関を開ける。
今日は涼しげで空気が澄んでいて、天気も快晴だ。春に相応しく穏やかな気候に思わずいい日になりそう、と思った。きっと先程のは何か小さな幸せの布石に違いない、そう信じて玄関の鍵を閉めようとする。
「……あ、財布忘れた」
ついでに窓際の、サボテンの水やりも。
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かかおかか(プロフ) - 穏さん» こんばんは、閲覧及びお褒めの言葉をありがとうございます！少しでも楽しんでいただけたなら、幸いで御座います。嬉しいお言葉を糧に頑張って参りますので、是非これからものんびりお付き合い頂ければ幸いです！ (2020年8月26日 19時) (
レス) id: 82dfa75340 (このIDを非表示/違反報告)
穏(プロフ) - こんばんは。コメントを寄せていただいたので、かかおかか様の作品を閲覧させていただきました。ごく普通で穏やかな日常が綴られていて、とても素敵な距離感だなぁと思いました。かかおかか様の無理のないように更新頑張ってください！応援しております。 (2020年8月26日 19時) (レス) id: 67f6be1784 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かかおかか | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/home
作成日時：2020年8月17日 21時
