はやみねキャラと過ごす日常・５

目が覚めて、異国の地に ページ46

「……気がついたかい？」

ふ、と目を開ければ目覚めにはきついくらい、かなりクラッとくる美貌の持ち主がいた。

『気がつきましたよ。気絶させるならそうと言ってください』
「ふふ、音もなく背後に立つのは、彼の得意分野だからね。それより、なにか気づかないかい？」

え？
周りを見れば、冬らしく茶色い芝生、勢いよく噴きあげる噴水、まばらにいる銅像。
意識を失う前の記憶、そして全身の五感を駆使すれば、ここが日本じゃないことが容易に理解できた。
じゃあ、ここはもう……。

『そう、ここはフランスだよ！』
［正確にはフランスのリュクサンブール公園ですけどね］

イヤリングからＲＤさんの声。
……マジですか。
それにしても本当にいきなりで、展開の早さに圧倒される。
フランスだって普通に行ったら旅費に何十万かかるか分からないし、着くのだって何時間かかるか分からない。
それを目が覚めたらフランスでしたー、なんてファンタジーすぎる。

「どうしたんだい？」
『いえ……なんか、夢のようで現実味がないなぁって』

ぼんやりとそれを伝えるとクイーンさんは苦笑した。

「また倒れないでくれたまえよ？」
『承知してます』

つられて私も苦笑してしまった。
大丈夫だ、もうこういうのには慣れてしまった。というか慣れないと生きていけない。

「それより、クイーン。これからどうするのですか？」

ジョーカーさんがクイーンさんの背後からヌッと現れた。いつもの中国服のままだ。

「そうだねえ……この格好は目立つだろうね」
『あれ？そういえば、クイーンさんたちは変装してこなかったんですか？』

世界的な大怪盗だし、顔や服装ぐらいはごまかしておく必要があると思うんだけど……。
もしかして、あんまりに有名な怪盗だからこんな街中でうろつくわけがないという人たちの心理を利用しているのか？
いや、そんなわけがない。
じゃあ、意外とフランスではクイーンさんの名がとても有名で、ファンがクイーンさんの格好を真似するのが流行だから、その中に本物がまじっていたとしても気づかないとか？
……いや、考えがバカげている。リアリティがない。

「ああ、それなら大丈夫だよ。服なら今から選びに行くんだから」

その楽天的なクイーンさんの言葉に、ジョーカーさんがまゆをひそめた。

「もしかして……服の買い物をしたかったがために、ぼくたちは変装しなかったんですか？」

声が当惑と怒りに震えている。

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