空っぽの瓶は語る ページ41
「それで、それ、なんなの？」
ジュリアスが指さす先には、Aからもらったクッキーの瓶。
「ああ、これか？Aからクッキーをもらったんだ」
「えー、いいな、ぼくにもわけてよ」
姫の何十倍もマシだし、と言って部屋の隅まで吹っ飛ばされるジュリアス。
無言で合掌してから、おれは中が空であることを示す。
「残念だな、もう食っちまったから。感想だけ言うと、おいしかったぞ」
おれのためにつくってくれたようなものだし、と言うとジットリとした目線がつきささる。まったく、男の嫉妬は醜いぜ。
ふと、あの時星に願った言葉を思いだす。
短冊には書いていないが、織姫と彦星は聞きとどけてくれるだろうか。
──Aが、幸せに。
一年に一回しか会えないやっかみで願いを無視してくれるなよ二人とも、と心の中で言ってやる。
「でも、本当においしかったぜ。──本当に」
電気に透かして空の瓶を振ると、光に反射してそれはきらきらと光り、中の小さなクッキーのかけらや塩の粒も瓶の中で楽しそうに飛び跳ねていた。
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Aside
……。
さて。
あれから数週間の時が流れた。
……もうこの言葉で勘のいい人は分かったと思う。
背中には柔らかいベッドの感触、腹には暖かい毛布。
ちょっと痛む首筋。
ふわあ、とあくびをすると天井から声がした。どこか機械的な、しかし決して無感情ではない声色だ。
［お目覚めですか？クイーンがリビングのソファーの上で(ゴロゴロしながら)あなたを待ってますよ］
そう、ここは空高くの飛行船の中にいるのだ。記憶にある時までは地上にいたのに、なんてことだ。
ということは……気づかぬ間にあれから半月が経っていたということなのか。早いものだ。
たまっていた課題やらなんやらを終わらせていると気がついたらこうなっていた。
十五日分の授業の遅れを死にものぐるいで取り戻した疲れは大きい。
［大丈夫ですか？遠い目をしてますが……］
『ああ……大丈夫です、すぐに行きますよ』
私はベッドから立ちあがり、軽く身じたくだけ整えて、クイーンさんたちのいる部屋に向かった。
……ああ、慣れって恐ろしい。
『……は？今、なんと？』
「だからね、Aちゃん！」
ソファーの上でふんぞりかえったクイーンさんが、猫を撫でながら私を見た。
美しい月長石の瞳が楽しそうにきらきら光る。
「一緒にフランスへ行こうって、言ってるんだよ！」
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鳥羽(プロフ) - 夜巣雅さん» わざわざ長文ありがとうございました。とても温かみのある内容だったのでとても嬉しかったです。丁寧に読ませていただきました！わたしの小説で、はやみね先生に興味をもたれる方がいるだけで、これからも更新の励みになります！これからも、更新頑張ります！（≧∇≦） (2017年10月20日 19時) (
レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
鳥羽(プロフ) - 桜さん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます！これからも更新頑張りますね！(⌒▽⌒) (2017年10月20日 19時) (レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
夜巣雅 - 前文の続きです。とても面白い内容で夢中になって読みました。この作品がきっかけで、はやみね先生の作品も読んで見たいと思いました。興味を持つきっかけを与えてくれてありがとうございます。これからの更新も頑張ってください！長文失礼いたしました。 (2017年10月18日 23時) (レス) id: b52001774d (このIDを非表示/違反報告)
夜巣雅 - はじめまして。つい最近読み始めた者です。最初、別のトリップ作品を読んでいた時に下の関連のところで鳥羽さんの作品を見つけました。元々はやみね先生の作品を知らなかったので「はやみねキャラ？何のキャラだろう？」と興味を持ち、鳥羽さんの作品を読んでみました。 (2017年10月18日 23時) (レス) id: b52001774d (このIDを非表示/違反報告)
鳥羽(プロフ) - ナツさん» きゃー！嬉しい言葉をありがとうございます！まだ好きでいてくれるなんて（≧∇≦）！私生活が忙しい中本当にこの言葉は励みになります(^^)これからもナツさんの言葉を胸に、更新頑張ります！コメントありがとうございました！！！ (2017年9月14日 22時) (レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥羽 | 作成日時：2017年7月30日 13時
