はやみねキャラと過ごす日常・５

虎穴に入らずんば虎子を得ず ページ11

「この部屋もないようですね。次に向かいましょう」

テキパキと空き巣よりも効率よく探すジョーカーさん。これが怪盗のパートナーか。
電気をつけるわけにもいかないので小型懐中電灯を口にくわえて探す。
引き出しということが分かっているなら、すぐに見つかるだろう。
私たちは、柳川さんの部屋に入る。
彼の部屋はもともと落ち着いているから、探しやすい。

『やはり、隠し部屋とかあるんですかね』
「それを、クイーンは探してるんです。クイーンなら百パーセント見つけられますから」

その顔は信頼に満ちているような気がした。やっぱり、ジョーカーさんは怪盗としてのクイーンさんを尊敬しているんだ。

「……ぼくが後で食べようと思っていたおやつを鍵つきの引き出しにいれたときも、すぐに開けられ食べられたことがありましたからね」

次の瞬間鬼神と化すジョーカーさん。
私の前のセリフ削除訂正。
……まあ、しなくてもいいか。

「そんなことより、早く行きますよ。早く見つけないと、それだけ相手と対峙する可能性が高くなりますから」

それは、いけないな。
早く出ようと思ったんだけど、クローゼットの奥で何か光ったのを見つけた。

──あれ？これは……。

近寄って見てみると、それは空のペットボトルだった。
このつぶれ方で、なんとなく思い出す。
これは多分、柳川さんと私が初めて会ったときに私がおごった水だ。
彼は冗談で「持って帰る」と言ったのかと思ったけど、まさか本当にまだ持ってたとは思わなかった。
でも、どうしてあるんだろう？存在を忘れてて捨ててなかったとか？
私は床を見る。埃一つ落ちていないことから、掃除がゆきとどいていることが分かる。
そんな柳川さんが、ペットボトルを見落とすことがあるだろうか？
ゴミ収集癖はないみたいだけど……。

「おい、そこでなにやってる」

ギャアアアアアアアアアアア！！


心の中で大きな悲鳴をあげる。
おそるおそる振りかえると……この部屋の主がいた。ドアの裏から現れたらしい。いつからそこにいたんだろう？
げ、不法侵入ばれた。
いやそれどころじゃなく本当にヤバイことになった。
目でジョーカーさんを探すが、すでに他の部屋に行ったのか、姿が見あたらない。
そういえば、「次の部屋に向かいましょう」って言ってたな……。
私は姿を見られないように懐中電灯を消し、通信機を取り出す。「A？どこにいるんですか？」というジョーカーさんの声。


──とてつもなくマズイことになった。

初エンカウントが難敵すぎる→←さて、仕事の始まりだ。

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