意識の底に沈んだ既視感 ページ45
「お米を精白するときにでる粉だよ。これに塩をまぜて、野菜を漬けるのに使うんだ。また今度、キュウリを漬けたのをつくってね」
『……ぬかが、どうしたの？』
「さあ？」という顔をする教授。なんで突然こんな脈絡のない話をしたんだ。
近くでトラツグミがヒョーッと鳴いた。
ある日、いつものように教授の本の掃除をしていると、本が二冊、無くなっていることに気づいた。
いや、あんなにあったら覚えるのは困難だけど、たいていは定位置にあるので無いことが何となくわかるのだ。
たしかタイトルは……。
『教授』
「んー……なに？」
うたたねをしていた教授は、不機嫌そうに顔をゆがめる。
『ここに埋もれてあった「新羅」と「人羅」っていう本があったと思うんだけど……知らない？』
「……さあ？」
それもそうだ。教授が覚えているはずがない。
だから私は、そこで話題を終わりにした。
しかし私は気づかなかった。
この出来事が、私の運命を大きく変えてしまう伏線になっているということを……。
夜中、理由もなく私は目覚めた。
……そういえば前にこんな夜、誰かに会ったような。しかし、何が起きたのか思い出せない。
とにかく、私はソファーから立ちあがり、無意識に近い意識で向かっていた。
向かうのはあのときのベランダである。
……ん？あのとき？
どんなときだったっけ、と首をひねる。
でも記憶は朝霧のようにもやがかかっていて思いだせない。
ベランダにシルエットが見える。見覚えのある光景に一瞬めまいがする。これが、デジャ・ビュというやつだろうか。
でも、なんとなく違う。月の位置がズレていて逆光になっておらず、今夜はその人の顔立ちがハッキリ見える。……今夜"は"？
自分で出した言葉に首をかしげながら、私はその人を観察する。
古代ギリシャの彫刻のような美貌は、この世のものではないと思わせる。
肌も髪もぬけるように白く、目が灰色がかっている。長い髪や長いまつげなどは女の人だと思わせるけど、その長身やしっかりした体躯からは男の人にも見える。
満月の夜がいっそうこの人をミステリアスにしたてているようだ。
今まで出会ってきたどの人たちよりも美しい。日本人、いや人間離れしている。
その人の髪がなびき、銀に美しく光る。私はゴクリとつばを飲みこんだ。
その人は、私の姿を見とめると、ふっとほほえんだ。
白い口紅で色を消したくちびるが、ひらく。
「ボンソワール、日本のおじょうさん」
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鳥羽(プロフ) - レイさん» ありがとうございます！なかなかの長編になりそうです(汗)更新頑張ります！ (2017年4月29日 11時) (
レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - クイーンが登場！！(≧∀≦)でもまさかの展開ですね！？��(ﾟДﾟ)続きが気になります…！ (2017年4月27日 23時) (レス) id: fc45d488d7 (このIDを非表示/違反報告)
鳥羽(プロフ) - レイさん» 喜んでいただけて何よりです(*^_^*) (2017年3月15日 7時) (レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - わぁあ！！神宮寺さん！！(≧∀≦)素敵です！！ (2017年3月14日 11時) (レス) id: fc45d488d7 (このIDを非表示/違反報告)
鳥羽(プロフ) - レイさん» ありがとうございます！頑張って更新しますね( ´ ▽ ` )ﾉ (2017年3月12日 17時) (レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥羽 | 作成日時：2017年2月11日 21時
