白黒パレット【怪盗キッド/黒羽快斗】

episode12. ページ12

「一々ギャーギャー騒ぐなよ……だからまだガキっぽいんじゃねえか？」
「んなこと言われたことないし。それにそういうことばっかり言うから青子ちゃんにも変態呼ばわりされるんじゃないの？」

ふうん、と快斗が頬杖をついてじっと私を見つめる。何か気障な台詞の一つでも言ってくれるのかと期待したのが本音だが、口から飛び出したのは正反対の言葉で。

「そういえばお前、小五の時と比べたら胸育ったよな〜……なんて」
「どこ見てんの！？当たり前じゃない、もう高校生だし」
「まあ成長したなって感じ」

何処か上から目線で物申す快斗に、頬を膨らませる。確かに快斗の母親の千影さんはスタイル抜群、容姿端麗だからそういうのは見慣れてるんだろうな。

はあ、とため息を吐いた。

「私のことばっかり言ってるけど、快斗だって小さい頃と変わってないじゃない！せいぜい変わったのは声くらいでしょ」
「俺か？充分変わってるけど」

きょとんとした表情で快斗が首を傾げる。確かに幼い頃とはうって変わって「可愛い」と言うよりは「格好良い」と言った方が合っているかもしれない、と少し焦りを覚えた。

「例えば？」
「身体つきだって変わったろ。今の俺だったら本気出せばお前の腕なんかすぐ折れそうだし」
「それ、私が可憐だって褒めてんの？それともけなしてるの？」
「好きに受け取れば？それに＿＿」

＿＿好きな女(ヤツ)だって居るしな

後頭部に手を回され、額を突き合わせた状態で快斗が大人びた笑みを浮かべる。お互いの息が掛かり、唇が触れるまで一センチも無い。

ドキン！と心臓が跳ね、自然と顔が赤くなる。ふいっと視線を逸らせば快斗が笑い、後頭部から手を離した。

「顔、赤いけど？」
「……意地悪」

キスするとでも思った？という言葉がぐさりと胸に刺さる。図星なのが少し恥ずかしかったが、それよりも何とも言えないモヤモヤとした気持ちが脳内に浮いていた。

＿＿“好きな女(ヤツ)だって居るしな”

それって、本当なの？と少し不安になる。幼い頃に自分から彼と縁を切るために留学したのに、今更嫉妬するなんて最悪な人間だ。ぽろっと溢れた想いの欠片を見られたくなくて、顔を背けた。

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