神聖な山 ページ25
水明は女性を山の麓までではなく、家の住所を聞いてそこまで連れていった。
そこは領内の小さな集落だった。
しかし、ここの集落の人間は裕福ではない、むしろギリギリの生活をしているのだろう、ということが家々を見ただけでわかった。
『ごめんください。』
戸を軽く叩く。
すると少ししてどこか満足そうな顔をしている年配の女性が出てきた。
だが、その表情もすぐに変わる。
目の前の少女が誰であるかを知らないのか、不審そうな顔をしたあと、すぐ隣にいた女性を見て一瞬目を見開いた。
『この女性が山で一人でいたので、家がここだというから連れてきました。
なぜ、目の見えない女性が置き去りにされていたのか、しかも共に山に入ったと言う義母はあなたですよね?
心配で探しまわって、家にはまだ居ないだろうと思いましたが。』
水明は普段砕けた口調だが、それもかしこまって話す相手ではないと判断した者と、気軽に話せる者に限っての話である。
初対面の人物にはそれ相応の対応はする。
『そもそも、あんた誰だね?
小娘が生意気な口をきいて。』
老婆は心底嫌そうな顔をして言った。
『…申し遅れました。神覚家七代目当主、神覚水明です。』
水明の頭からつま先まで凝視した後、
『嘘言ってんじゃないよ、小娘が。
おい、あんた!村長呼んできておくれ!』
と老婆が叫ぶ。
奥の方から出てきたその老婆の夫であろう人物は、水明を忌々しそうに睨みながら横を通り過ぎて出ていった。
『あ、あのお義母さま、はぐれてしまって申し訳ありません。』
水明と腕を組んでいた女性はその腕を解いて、深く頭を下げる。
『聞くが、この女性の夫はどこだ?少し話がしたい。』
この家族に異変を感じ取った水明は質問を投げかけた。
それに、敬語を使うほどの人間でない、ということも分かったのだろう。
『なんで小娘に私の息子を合わせなきゃいけないのかね、用が済んだらとっとと帰りな。』
礼も言わず、さっさと返そうとする老婆にさらに不審感を募らせた時、
『す、水明様!』
遠くから男が走ってくるのが見えた。
その少し後ろには先程の年配の男がいる。
『私、村長の松前と申します、大したお迎えも出来ずに申し訳ありません!』
村長の言葉で、小娘の戯言だと思っていた老夫婦は急いで床に膝をつき額を床に擦り付け、謝罪した。
その肩は恐怖からか、震えていた。
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ダイフク(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます!オチについては明言出来ないのですが、楽しんで読んでいただけるかな、と思います…。更新頑張ります! (2022年3月6日 1時) (レス) id: 7eb0c29f0f (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - ダイフクさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張ってください。更新楽しみにしています。 (2022年2月25日 11時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
ダイフク(プロフ) - みきゃるさん» コメントありがとうございます!とても遅くなりましたが、これから少しずつ更新して行くのでよろしくお願いします! (2022年2月6日 1時) (レス) id: 7eb0c29f0f (このIDを非表示/違反報告)
みきゃる(プロフ) - とても面白いです!!!ゆっくりでもいいので、続きが見たいなと思ってしまいました、、! (2021年12月12日 10時) (レス) id: 22cb947882 (このIDを非表示/違反報告)
ダイフク(プロフ) - 雪マカロンさん» コメントありがとうございます!早く高専生たちを登場させられるように更新頑張ります! (2021年3月4日 20時) (レス) id: 9e9c718d28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ダイフク | 作成日時:2021年1月11日 15時