澄清 ページ15
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「…私、少し頑張ってみようと思う」
「うん。元気なおばあちゃんになってな」
「ふふ…おばあちゃんになる前に死んじゃったらどうするん」
「せやなぁ、そん時は俺が嫁さんに貰ったるよ」
宣誓のように我が家の神様にそう告げると安心したように彼は笑う。冗談交じりに私の言葉に返した彼は悪戯気味に歯を剥き出して笑うと、ぽんぽんと私の頭を撫で一歩後ろへと下がった。
役目を終えた彼はもう私の前から消えてしまう。
どこか寂しくて俯いてしまう私の名前を呼ぶ彼を、なんだか見たくなくて。
静かに別れを告げようとすれば彼はそういやお代貰っとらんかったな、と一言呟いて。
「A、俺の名前、ゾムっていうんよ」
「え？」
「ひひ、もーらい」
初めて聞かされた彼の名前に顔を上げれば狙っていたように目の前まで戻ってきていた彼の手がまた頬に触れる。なに、その言葉は彼の唇を透過し口の中へ吸い込まれた。唇に冷気のようなものが触れているのがぼんやりと感じ取れた。
ふに、と触れたやわさにぱちりと瞬きすれば、三日月に細められたライムグリーンがおかしなものを見るようにきらりと輝いて、やがて満足したように身体が離される。
「っ…セクハラ守護神…！私、強く生きるから…！」
「はは、…ちゃんと見守っとるよ」
ふわりと身体を浮かせた彼は風を纏って青い空に吸い込まれていく。
そうして彼が目の前から消えると、夢から覚めたような妙な喪失感が胸に渦巻く。それでも私は前を向くと決めた。
「またね、ゾム」
快晴の空に向かって呟いた声は、きっと彼に届いているだろう。
【
空が曇りなく晴れ渡っていること。
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作者名：ヒスイ
| 作成日時：2020年12月19日 22時
